Research Abstract |
本年度は,ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)と健常者ならびにHO-1欠損症患者由来Epstein-Barrウイルス形質転換B細胞株(LCL)を用いて,HO-1およびHO-1代謝産物であるCO,ビリルビンによる組織因子(TF),プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター-1(PAI-1),トロンボモジュリン(TM)の発現調節の解明に取り組んだ. その結果,HUVECにHO-1誘導剤であるヘミンを添加すると,TFはほとんど変化しないが,PAI-1は低下し,TMは増加することが明らかになった.一方,HO-1活性阻害剤であるTin protoporphyrin IX(SnPP)を同時に添加すると,TFは有意に増加し,TMの増加は抑制された.またHO-1代謝産物としてCO供与体であるDichlorotricarbonylruthenium(II)dimer(CORM-2)あるいはビリルビンを添加すると,TF,PAI-1は有意に低下し,TMは増加した.一方,健常者ならびにHO-1欠損症患者由来LCLにヘミンを添加すると,健常者由来LCLではTF,PAI-1はほとんど変化を示さなかったのに対し,HO-1欠損症患者由来LCLではTF,PAI-1が有意に増加した.さらに,HO-1欠損症患者由来LCLにCORM-2あるいはビリルビンを添加すると,PAI-1の低下を認めた.また,HO-1欠損症患者由来LCLにCOあるいはビリルビンを添加すると,p38MAPK,ERK1/2の活性化が認められた. 以上の結果は,HO-1およびHO-1代謝産物にはp38MAPKおよびERK1/2を介して,TF,PAI-1およびTMの発現を調節し,血栓形成抑制作用を示す可能性があることを示唆する有意義なものである. 来年度は,LPS刺激マウスにクルクミンを投与してHO-1を誘導し,過凝固状態を改善する効果があるかどうかについての解明に取り掛かる予定である.
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