2011 Fiscal Year Annual Research Report
津波被災後のスリランカにおける高齢者の心的外傷と認知症に関する医療人類学的研究
Project/Area Number |
21590701
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
野村 亜由美 大阪大学, コミュニケーションデザイン・センター, 招へい教員 (50346938)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本田 純久 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究所, 教授 (90244053)
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Keywords | 医療人類学 / 自然災害 / ストレス / 認知症 / 国際協力 / 社会医学 / スリランカ / 精神保健 |
Research Abstract |
本年度も引き続き、2004年スマトラ島沖地震によって津波の被害を受けたスリランカ南部地区において、60歳以上の被災住民30人を対象に、認知症を主眼とした津波被災後の日常生活の変化、健康状態などに関する聞き取り調査を行った。また被災地区に住む医師、担当政府官らから、津波被災前後の住民の精神被害の状況、経済状況や人口変動などに関する情報を収集するとともに、高齢者を対象とした地区活動に参加しながら、当該地区が抱えている問題と課題について分析を行った。 分析の結果、被災地区の60歳以上の認知症発症率は1パーセントから2パーセント程度、認知症有病率については、津波後の人口流出などもあり数値にばらつきがあるが、70歳以上の認知症テストMMSE(Mini-Mental State Examination)では、軽度の認知症疑いが15パーセントから17パーセントであった。MMSEの検査項目の内、特に得点が低かったのが月日や計算式の問いであったが、これらには文化的背景(教育歴、経済状況等)がバイアスとなって影響を及ぼしていると考えられるため、総得点だけから認知症疑いと結論付けるには注意が必要であり、更なる研究が必要であると思われる。 津波被災前後の認知症の発症率・有病率の変化については、被災前のデータがないため明らかではないが、被災後の発症率については津波被災による心的外傷が原因となる明らかな増加は認められず、自然増加内に留まっていると考えられた。また本調査を開始した2006年以降、津波被害を要因とした住民の精神的健康度や身体的健康度には顕著な影響は認められず、心的外傷と認知症との間には関連がないと推測される。
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Research Products
(16 results)
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[Journal Article] ハワイ,カウアイ・コミュニティ・カレッジ教員・看護学生受け入れ報2007-20082011
Author(s)
山口智美, 浦田秀子, 入山茂美, 井上晶代, 中尾優子, 佐々木規子, 野村亜由美, 田中悟郎, 鶴崎俊哉, 中島久義
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Journal Title
保健学研究
Volume: 21(2)
Pages: 85-92
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[Journal Article] 精神医療従事者における職業性ストレスの検討と対策レジリエンスに着目して2011
Author(s)
猪狩圭介, 天野昌太郎, 村田尚恵, 浅井初, 黒木俊秀, 原田聡, 福田貴博, 大鶴卓, 高橋紀子, 山田久美子, 本田純久
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Journal Title
メンタルヘルス岡本記念財団研究助成報告集
Pages: 5-14
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