Research Abstract |
硫酸亜鉛(5%)20μL点鼻による嗅覚障害モデルマウスを作成し,嗅球中モノアミン含量への影響を電気化学検出器を用いた高速液体クロマトグラフィー方により検討した.その結果,対照群に対して,硫酸亜鉛を点鼻投与した群のドパミン(DA)組織重量は3日経過では70%,7日経過では55%程度にまで低下していた.モノアミン類の代謝物の3,4-ジヒドロキシフェニル酢酸(DOPAC)はDAより代謝され生成されるが,このDOPACも組織重量においても3日経過では30%,7日経過では25%程度に低下していた.一方,ノルエピネフリン(NE)およびセロトニン(5-HT)に目立った変化はみられなかった. 硫酸亜鉛嗅覚障害モデルマウスに対して,漢方処方の加味逍遥散(柴胡,芍薬,朮,茯苓,当帰,甘草,牡丹皮,山梔子,薄荷,生姜)を経口投与した群では,DA組織重量は200%に上昇していた.DOPAC組織重量についても300%と高値を示した.NE及び5-HTでは,それぞれの群の間で胃立った変化が見られなかった.構成生薬10種より一味の生薬を除いた処方を作成し生薬の寄与を検討したところ,生姜抜き加味逍遥散投与群ではDA組織重量は140%を示し,DOPAC組織重量は200%を示した.NE及び5-HTでは,目立った変化はみられなかった.一味抜き処方での検討から,加味逍遥散の障害改善効果は処方としたときが最も高く,一味を抜ぐことで弱まることを確認した.また甘草,芍薬,生姜,朮が効果に大きく寄与すると考えられた.今後は動物の例数を増やし,一味抜きの処方での検討や,生薬単一での効果の検討,作用発現機序,生理活性物質について検討する予定である.
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