2009 Fiscal Year Annual Research Report
通常食で自然発癌する非アルコール性脂肪肝炎モデルマウスにおける発癌の分子機構
Project/Area Number |
21590849
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
西原 利治 Kochi University, 教育研究部・医療学系, 教授 (60145125)
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Keywords | NASH / NAFLD / 肝細胞癌 / マイクロアレイ |
Research Abstract |
近年、肥満人口が増加し、すでに健診受診者の1/3は脂肪肝を指摘されるようになった。このような症例の多くは、内蔵脂肪織への浸潤細胞から分泌されるTNF-αをはじめとする炎症性サイトカインに糖尿病予備軍となっている。このような炎症により惹起される酸化ストレスは高度の脂肪肝を伴う幹細胞に容易に障害を与え、慢性進行性肝障害がもたらされるものと考えられている。飲酒歴のない脂肪肝症例の半数はこのような肝障害を合併しており、その1割はNASHと呼ばれる特に肝硬変の進行し易い肝疾患に陥っている。NASHの2割は10年ほどの経過で肝硬変に移行し、肝細胞癌の温床となることから、今後10年で本邦の肝硬変は1.3倍に、肝細胞癌の1割がNASH由来となるのではと危惧されている。 本研究では閉経モデルマウスであるArK0がインスリン抵抗性を獲得し、脂肪肝を経て、NASHを発症することに着目し、炎症性サイトカインであるTNF-αシグナルを遮断することにより肝病変の改善を試みた。このArK0・TNF-α-RK0マウスの食餌摂取量は野生型マウスと同等で、血清コレステロール値や中性脂肪値もほぼ同等であったが、血中レプチン値とインスリン値は異常高値を示し、空腹時高血糖を伴う強い耐糖能異常も観察され、高い肝発癌率を示した。レプチンは食欲中枢に作用し、食欲を抑制する作用を有するサイトカインであり、ob/obマウスのようにレプチンを欠失する動物では肥満と高度の脂肪肝が惹起される。カヘキシンと呼ばれ食欲抑制作用を持つ物質として見いだされたTNF-αシグナルを遮断することにより、高度のレプチンが誘発されたとの本年度の研究結果は、レプチンがTNF-αを介して食欲を制御する過程をエストロゲンが促進していることを示しており、男性や閉経後の女性においてエストロゲンが低値であることがレプチン抵抗性を惹起する因子として重要であることを示している。
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