2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21590993
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木島 貴志 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (90372614)
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Keywords | 小細胞肺癌(SCLC) / 多剤耐性 / 分子標的治療 / ケモカイン / CXCR4 / HER2 / ABCトランスポーター / ラパチニブ |
Research Abstract |
我々は、前年度までに、小細胞肺癌(SCLC)の再発時多剤耐性化における細胞接着誘導抗癌剤耐性(CAM-DR)機序成立に深く関与する分子としてテトラスパニン蛋白CD9を同定し、本分子を標的とした多剤耐性克服治療の有効性を報告した(Cancer Res,2010 Oct 15;70(20):8025-35)。本年度は、ケモカイン受容体CXCR4阻害剤TF14016が、SCLC細胞の間質への接着や運動を抑制すること(in vitro)、およびマウス実験的転移モデルにおいて著明に遠隔臓器への転移を抑制し、癌新生血管の増殖も抑制すること(in vivo)を証明した(論文投稿中)。続いて、我々はHER2が欧米人と比較し日本人のSCLCで多く発現していることを見出した。HER2発現はSCLCの予後不良因子の1つであるが、欧米人SCLCにはほとんど発現がなく、人種差の可能性がある。HER2キナーゼ阻害剤lapatinibは単独では耐性株に細胞死を誘導できないが、一旦耐性化した抗癌剤の感受性を回復させた。SCLCの標準的治療薬であるエトポシド耐性ではABCB1、イリノテカン耐性ではABCG2という薬剤排出ポンプが発現するが、lapatinibはこれらのポンプ機能を阻害することで抗癌剤耐性を克服すること、特にHER2を発現しているエトポシド耐性SCLCにおいては低濃度のlapatinibによるHER2阻害がSrcやcaveolin-1の活性化を介してABCB1のポンプ機能を阻害するメカニズムを発見したCMol Cancer Ther 2012,in press)。次に、抗HER2抗体(trastuzumab)がHER2シグナルの直接阻害ではなくNK細胞やMφによる強い抗体依存性細胞障害(ADCC)活性を介した免疫学的機序によってHER2発現抗癌剤耐性SCLC細胞にアポトーシスを誘導することを証明した。しかし、単にHER2が発現しているだけでは強いADCC活性が誘導できない場合があることも判明し、現在どのような補助経路あるいはそれにかかわるどのような分子が重要であるかを解析中である。また、ヒトSCLC組織は通常のハーセップテストではHER2陽性組織も染まりにくいことが分かったため、高感度で疑陽性の出ない特異性の高い免疫染色法を開発中である。
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Research Products
(3 results)