2009 Fiscal Year Annual Research Report
人口動態統計による精神障害者(特に統合失調症)の自殺死亡の疫学的研究
Project/Area Number |
21591531
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Research Institution | Hachinohe University |
Principal Investigator |
瀧澤 透 Hachinohe University, 人間健康学部, 准教授 (40389680)
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Keywords | 自殺 / 統合失調症 / 人口動態統計 |
Research Abstract |
1977年にMilesは34の論文をレビューし、"統合失調症の生涯自殺死亡率は10%"と推定した。その後多くの研究者に引用されることとなり、日本においても現在も広く「統合失調症の約10%は自殺する」とされている。しかし、近年、いくつかの新しい研究では、これより低い値が示されている。 例えば、スウェーデンのOsbyらの研究では「男性統合失調症者3929人中212人(5.4%)が、女性3855人中168人(4.4%)が自殺した」と報告している(Osby,et.al.2000)。また、アメリカのPalmerらは、1966年からの632論文をレビューし、それより得られた61研究に対してメタアナリシス分析を行うことによって「統合失調症者の4.9%はその生涯で自殺をする」とした(Palmer,et.al.2005)。さらにCohenらは、10年間以上の継続調査がなされた国々の信用される過去の研究より、途上国や中進国の統合失調症の自殺死亡率を次のように報告した。インド7.8%、ブルガリア3.6%、中国2.2%、コロンビア1.0%。(Cohen,et.al.2008)。 しかし、日本において統合失調症の自殺の実態を明らかにした論文は2つしかなく(藤田ら1992,太田ら1991)、十分な状況でない。統合失調症の自殺リスクは高いだけに、実態を正しく把握することが地域における精神障害者の自殺予防へとつながる。近年は警察統計で原因動機別の自殺死亡数が詳細に示されるようになったが、人口動態統計を用いた疫学研究によるさらなる解明が求められている。
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