2011 Fiscal Year Annual Research Report
人口動態統計による精神障害者(特に統合失調症)の自殺死亡の疫学的研究
Project/Area Number |
21591531
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Research Institution | Hachinohe University |
Principal Investigator |
瀧澤 透 八戸大学, 人間健康学部, 教授 (40389680)
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Keywords | 自殺 / 精神疾患 / 人口動態統計 / 目的外使用 / うつ病 / 統合失調症 / 精神障害 |
Research Abstract |
平成23年度は、前年度に実施した調査(厚労省への目的外申請による人口動態調査死亡票の転写入力)で得られたデータを集計分析し学会発表および論文執筆を行った。 平成20年自殺死亡30299人のうち確認できた29799人を解析対象としたが、精神疾患の記載のあった者は2964人であった。これら2964人に占める主な疾患の人数(割合)は、うつ病1913人(64.5%)、統合失調症550人(18.6%)、躁うつ病101人(3.4%)、パーソナリティ障害24人(0.8%)であった。先行研究との比較では、うつ病と統合失調症の割合は2倍高いが、パーソナリティ障害は16分の1と極めて少なかった(Bertoloteら2004)。 次に精神疾患別の自殺手段を検討したところ、統合失調症の51.1%は縊首(X70)、21.3%は飛び降り(X80)、4.5%は溺死(X71)、4.2%は鋭利な物体での自傷(X78)、3.8%はガス(X67:一酸化炭素または硫化水素)であった(※カッコ内はICD-10コード)。同様に、うつ病の69.0%は縊首、飛び降り7.2%、溺死3.5%、自傷2.1%、ガス9.0%、また、躁うつ病では59.4%が縊首、飛び降り16.8%、溺死4.0%、自傷4.0%、ガス4.0%であった。この年の自殺死亡の全体では、縊首64.8%、飛び降り7.8%、溺死2.8%、自傷2.3%、ガス14.4%であることから、統合失調症、うつ病、躁うつ病ではガスによる自殺手段が少なく、溺死がやや多かった。また、統合失調症と躁うつ病では縊首が少なく飛び降りが多い傾向がみられた。これら傾向の多くは先行研究と一致した(Huntら2006、Chenら2009)。 死因究明においては犯罪死の見逃し防止だけでなく、自殺対策の視点も必要である。死体検案書に自殺の精神疾患の記載をすることは自殺対策上重要であると考えられる。
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Research Products
(5 results)