2009 Fiscal Year Annual Research Report
予後不良がんの予知と克服を目指したオーロラ関連分子の細胞内ダイナミクス研究
Project/Area Number |
21591730
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
達家 雅明 Prefectural University of Hiroshima, 生命環境学部, 教授 (50216991)
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Keywords | オーロラキナーゼ / 染色体パッセンジャー / サバイビン / IAPファミリー / がん分子診断 / 抗がん分子標的治療 / 染色体分配 / アポトーシス |
Research Abstract |
オーロラとは医学生理学領域では染色体分配を制御している一群のセリン/スレオニン蛋白質キナーゼのことである。オーロラ関連分子に着眼した予後不良がんの新しい分子診断方法とがん細胞に対する新しい分子標的治療方策開発に資するオーロラ関連分子の細胞内ダイナミクス研究を行った。 (1) オーロラA:オーロラはヒトではA、B、Cと3種類存在する。この内、AはM期紡錘体形成中心であるセントロソームとその周辺に分布する。ヒトがんで高発現が知られ、がんでは細胞質における役割が議論されており、免疫病理組織学所見でも高発現したがん細胞でのオーロラAは細胞質局在を示す報告がある。本研究で我々は共焦点レーザー顕微鏡による緑蛍光色素標識蛋白質の挙動観察や核外脱出シグナル(Nuclear Export Signal (NES))付加オーロラAによる機能解析、細胞分画法による蛋白質解析などにより、オーロラAが界面活性剤可溶性蛋白質であること、また、生細胞内では細胞核や核膜辺縁に存在して働いていることを証明した。実際、セントロソームは核膜で核と繋がっており、細胞核を標的としたオーロラA阻害が抗がんには重要であることが示唆される。 (2) サバイビン:オーロラB、INCENP、ボレアリンと共にヘテロ4量体(染色体パッセンジャー複合体:Chromosome Passenger Complex (CPP))を形成してセントロメアで紡錘体チェックポイントを制御し、M期後期では細胞中央部分で細胞質分離に機能するサバイビンは、抗アポトーシス因子としても知られる。本研究では消化器がんの免疫病理組織学解析と細胞分画による蛋白質の分析によりサバイビン発現と予後不良が相関し、特に細胞質への分布が重要であることを示した。サバイビンは他のCPP同様界面活性剤不溶性であるがその分子内にNESを有し、CPP機能や抗アポトーシス機能に必須である。本結果は細胞核サバイビンが重要だとする他説と対峙し、抗がん分子標的化の観点から重要な知見である。
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