2009 Fiscal Year Annual Research Report
拍動流体外循環と肋間動脈圧モニターによる胸腹部大動脈瘤の対麻痺予防
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21591798
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
末田 泰二郎 Hiroshima University, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (10162835)
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Keywords | 脊髄虚血 / 対麻痺 / 胸腹部大動脈瘤 / 運動誘発電位 / 知覚誘発電位 / 拍動流体外循環 / 定常流体外循環 |
Research Abstract |
近年、胸部下行、胸腹部大動脈瘤の手術がステントグラフトを用いて行われるようになった。この際に脊髄前角細胞を養うAdamkiewitz動脈(前脊髄動脈)をステントグラフトで閉塞しても対麻痺が起こらない現象が報告されている。この要因として、1)ステントグラフト挿入時は下半身血圧が拍動流で保たれていること、2)Adamkiewitz動脈には側副血行路があり、閉塞しても短時間に側副血行路が形成されることが考えられる。そこで、本研究では下半身灌流を部分体外循環下に灌流した上で、下行大動脈を広範囲に遮断して定常流灌流と拍動流灌流で脊髄虚血障害発生に差があるか否かの実験を行った。ビーグル犬(平均体重8kg)5頭を用いて、開胸、開腹して、第4胸椎から第3腰椎までの大動脈を広く剥離し、第1~3腰椎動脈にテーピングを行った。脊髄虚血のモニターとして頭蓋刺激の運動誘発電位(MEP)及び下肢知覚神経刺激の知覚誘発電位(SEP)を用いた。第4胸椎から第3腰椎までの大動脈を上下で遮断して下半身の体外循環灌流は30ml/Kgで行った。定常流潅流から開始したところ5頭共遮断20分~30分後からMEP、SEPが軽度低下した。定常流灌流を拍動流灌流に変更して拍動流時の収縮期血圧を定常流より30mmHg上昇させたところ10分後にはMEPとSEP値が上昇し基準値に回復した。次に定常流灌流のままで第4胸椎動脈から順に第3腰椎動脈までの脊椎動脈を大動脈外側からクリッピングを行い、どの脊椎動脈レベルまでの結紮でMEPやSEPが変化するかを観察したところ、第1~2腰椎レベルまでのクリッピングでMEP、SEPが低下した。しかし、拍動流灌流に変更して収縮期圧を30mmHg上昇させたところMEP、SEPが回復した。以上の実験から、拍動流灌流による下半身灌流圧上昇は脊髄側副血流を増加させ対麻痺を減らすという仮説が正しいことが証明された。次年度以降は、第1~3腰椎動脈圧を測定して拍動流灌流下で側副血行路血流が増加して第1~3腰椎動脈圧が高くなるか否かを検討する。
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Research Products
(5 results)