2009 Fiscal Year Annual Research Report
網膜培養系を用いた血管新生の制御とその生体への応用
Project/Area Number |
21592227
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西嶋 一晃 Kyoto University, 医学研究科, 助教 (50432381)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻川 明孝 京都大学, 医学研究科, 講師 (40402846)
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Keywords | 網膜血管新生 / SDF-1 / CXCR4 / マイクログリア / 先導端細胞(tip cell) / タイムラプス(time-lapse) |
Research Abstract |
抗SDF-1抗体およびCXCR4の阻害薬であるAMD3100を用い、生後間もないマウスの網膜血管発生に与える影響、および成体マウスの網膜器官培養によるVEGF誘導網膜血管新生モデルでの影響の検討を行った。更に、新生血管および間接的に血管新生に関与すると報告されているマイクログリアの運動性を観察するために、Tie2-GFP遺伝子改変マウスの培養網膜による血管新生の様子をタイムラプス撮影し、SDF-1/CXCR4の抑制による、それらの運動性や形態の変化についても解析を行った。まず、in vivo網膜血管発生において、SDF-1/CXCR4を阻害することにより、視神経乳頭より延びる網膜血管網の半径は短縮し、また血管先導端細胞から出現する樹状突起フィロポディアも減少および短縮していた。抽出網膜のリアルタイムPCRの結果では、VEGFやその受容体であるKDR、 Flt-1の減少に加え、血管先導端細胞での発現が多いPDGFBやUNC5Bの発現も抑制されていた。次に、成体マウスを器官培養したex vivo VEGF誘導網膜血管新生モデルにおいては、リアルタイムPCRにより、VEGF刺激でSDF-1の発現が亢進しているのが確認され、更には抗SDF-1抗体、及びAMD3100を添加することで、濃度依存性に血管新生の発生数が減少することが確認された。また、タイムラプス撮影した動画の解析により、血管先導端細胞及びマイクログリアの運動性をも抑制していることが確認できた。続いて、組織内のマイクログリアを根絶させるために、クロドロネート含有リポソームを用いた実験においては、マイクログリアの根絶そのもので、血管新生数は減少したが、更にSDF-1/CXCR4抑制を加えることで、血管新生数は更に減少するという結果が得られた。以上、これらの結果を踏まえ、SDF-1/CXCR4は血管先導端細胞の活性を促進することにより直接的に血管新生に関与し、更にはマイクログリアを活性化させることで間接的にも血管新生を促進するということが示唆された。眼科領域において、糖尿病網膜症や加齢黄斑変性などの血管新生病は失明原因の上位を占め、血管新生のメカニズムの解明はこれら疾患の治療法開発にとって非常に重要である。
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Research Products
(1 results)