2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21592438
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
長谷川 誠実 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (10218456)
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Keywords | 歯痛 / 海馬 / 生理活性物質 / ATP / 歯髄刺激 / 脳血流 / 情動反応 / 下行性疼痛抑制 |
Research Abstract |
歯痛の情動記憶メカニズムに関する研究として、まず平成21年度には、歯髄刺激と海馬の関係を明らかにし、歯髄刺激が情動記憶を引き起こす刺激である結果を得た。次に、歯髄刺激は情動に関与する負の痛みであると同時に、歯髄刺激の繰り返しは下行性疼痛抑制を招来することも示した。そして、平成22年度にはさらに、この下行性疼痛抑制がオピオイドに関連したものであることにも言及した。そこで、平成23年度は、視点を現象から原因に変えて、海馬内の歯髄刺激時の生理活性物質の整理に入るべく、歯髄刺激時の海馬内ATP遊離に関するリアルタイム測定を行った。全身麻酔を施したラット切歯に刺激電極を埋め込み、さらに海馬内にATPバイオセンサーを埋入し実験に供した。そこで、ラット歯髄を、海馬血流増加反応が確実に生じる強度で30回刺激したところ、第1回目の刺激時のみATPが微量遊離することが示された。従来の研究結果と平成21年度の研究結果から、ラット歯髄刺激により海馬血流が増加するが、その増加反応はアデノシンおよびシクロオキシゲナーゼ2の関与のもとに生じていることが分かっており、また、歯髄刺激時の海馬内アデノシンは、マイクロダイアリシスの結果から極めて短時間のピークで微量遊離であることも報告している。すなわち、今回の、歯髄刺激時の海馬内ATP遊離のリアルタイム測定の結果はそれら過去のデータを裏付けるものであった。 以上平成23年度の研究結果は、ラット歯髄に対する電気刺激は、海馬内に短時間そして微量遊離を促し、そのATPは代謝されアデノシンとなることにより海馬内血管内皮細胞に働きかけ、それが海馬血流増加反応に繋がったと考えられる。さらに歯髄刺激の継続がオピオイドに関連した下行性疼痛抑制を生じるといった情動の報酬系にも関与することも考慮すると、歯髄刺激は快・不快の両面を持った特殊な疼痛として情動記憶に関与していることが考えられた。
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Research Products
(4 results)