2010 Fiscal Year Annual Research Report
TGF-β/Smad3シグナル経路を介した創傷治癒における瘢痕形成抑制法の検討
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21592597
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
田中 栄二 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (40273693)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木内 奈央 徳島大学, 病院, 助教 (30457329)
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Keywords | 創傷治癒 / 口蓋粘膜 / Smad3 / 瘢痕形成 / siRNA / Smad3拮抗薬 |
Research Abstract |
当該年度の研究目的として、口蓋の創傷治癒過程における瘢痕形成のメカニズムを解明と、その抑制を遺伝子レベルで図ることの可能性を開くことを挙げ、TGF-βとその細胞内シグナル分子であるSmad3に着目して、次の実験を行うこととしていた。1)マウス末梢血由来のfibrocyteの培養実験系を確立し、さらにSmad3ノックアウトマウス由来のfibrocyteの解析を行う、2)Smad3を標的遺伝子としたiRNA実験系を確立し、Smad3を標的遺伝子としたiRNAがfibrocyteの増殖および分化及ぼす影響について解析する、3)Smad3ノックアウトマウス由来のfibrocyteを野生型マウスの口蓋創傷部に移入し、治癒過程を解析することにより、瘢痕形成の抑制について検討する、4)Smad3を標的遺伝子としたiRNAを導入したfibrocyteを野生型マウスの口蓋粘膜に移入し、治癒過程を解析することにより、瘢痕形成の抑制について検討する。 本研究の成果として、(1)マウス末梢血由来のfibrocyteの培養実験系を確立した、(2)Smad3ノックアウトマウス由来のfibrocyteにTGF-β1を加えて、筋線維芽細胞に分化させた場合、Smad3シグナル経路が強く関与し、分化速度を有意に亢進した、(3)Smad3ノックアウトマウスの口蓋粘膜に創傷を作成した場合、その治癒速度がワイルドタイプマウスと比較して有意に亢進し、創傷部の粘膜による閉鎖が早期に生じることによって瘢痕形成が抑えられた。以上の結果から、TGF-β/Smad3シグナル経路が創傷治癒過程においてきわめて重要な役割を果たしていることが明らかとなったことより、Smad3を標的遺伝子としたsiRNA創薬が創傷の治癒促進効果および瘢痕形成抑制効果を有する優れた医療技術開発につながるものと考えられた。そこで、予備実験として口蓋裂患者の口唇形成および口蓋形成術後の治癒促進を想定し、ワイルドタイプマウスの口蓋粘膜に創傷を作成し、Smad3をリン酸化の段階で抑制するSmad3リン酸化阻害剤(SIS3)の口蓋粘膜への局所投与を行い、その創傷治癒促進効果と瘢痕形成抑制効果について検索した。その結果、SIS3を導入したマウスの口蓋創傷部では再上皮化・結合組織の有意な修復促進効果が認められた。
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Research Products
(3 results)