2012 Fiscal Year Annual Research Report
長期療養中の糖尿病患者の口腔衛生行動を支える効果的な看護介入方法の検討
Project/Area Number |
21592752
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
桑村 由美 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (90284322)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
南川 貴子 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (20314883)
田村 綾子 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (10227275)
市原 多香子 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (10274268)
松田 宣子 神戸大学, 保健学研究科, 教授 (10157323)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 糖尿病 / 看護 / 口腔衛生行動 / 長期療養中 |
Research Abstract |
H24年度の目標は、糖尿病患者の口腔衛生行動に対する認識と行動について質的研究結果をもとに、量的研究手法により対象者数を増やして調査することで、口腔衛生行動支援のための看護介入方法の試案へとつなげることであった。この目標に基づき、前年度に引き続き、糖尿病患者の口腔と口腔衛生行動に対する認識と行動に関する面接調査結果を信憑性や信頼性の確保のために共同研究者と討議を繰り返す中で糖尿病と歯周病の関係についての情報の認識に関する個別の背景因子等が明らかになり、成果の一部を第17回日本糖尿病教育・看護学会学術集会で発表(Jaden17 AWARD 最優秀賞)。この結果と臨床家からの助言をもとに口腔衛生行動の実態とその関連要因を明らかにするために質問紙調査を糖尿病患者157名に行った。有歯顎で天然歯のみ・義歯不使用者は習慣や爽快感の影響が強かった。有歯顎で義歯使用者を含む薬物療法中の人では同年齢者(H23年度歯科疾患実態調査)に比べ現在歯数は少なかったが、口腔衛生行動には積極的に取り組み、口腔衛生行動の関連要因として糖尿病と口腔に対する関心や口腔衛生行動への効力感、口腔内の自覚症状がないこと、糖尿病網膜症などの合併症がないこと等が明らかになった。糖尿病の重症化に伴い歯周病も重症化するため、重症化予防と重症者への支援が必要となることが確認された。次いで、糖尿病網膜症などの眼疾患合併患者(以下、眼症有群)の口腔内および全身の自覚症状を検討したところ、症状のない群に比べて歯の数が有意に少なく全身の合併症は重篤化し苦痛な自覚症状も多かったが、歯の気になる症状には有意差がなかった。このことから眼症有群には、自覚症状がなくても口腔衛生行動に積極的に取り組むことができるように、身体への負担の少ない方法を工夫しながら支援をする看護の必要性が示唆された(第18回日本糖尿病教育・看護学会演題登録中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度は、ほぼ研究計画にそって実施することができた。しかし、研究計画当初の看護介入については、まだ、実施できる状態ではないため上記のように評価する。原因としては、糖尿病の抑制に向けて国レベルで取り組みがなされているなど糖尿病対策の難しさがあり、だからこそ、個々の症例の呈する現象の意味を読み解く、すなわち、背景因子をしっかりと吟味する必要があった。効果の上がる看護介入となるために介入方法のエビデンスの構築が必要である。H24年度の研究結果からその具体的な項目の一部が明らかになってきた。加えて、介入結果の評価方法についても、事前に検討しておく必要がある。先行研究においても、糖尿病患者への看護介入に対する評価の難しさが指摘されており、慎重に検討する必要がある。以上のことから、研究当初目的に対してはやや遅れていると評価する。しかし、質的な研究をベースに患者の実態に沿った研究を重ねることで、これまでに明らかになっていなかった口腔衛生行動への関連要因が明らかになり、対象者の背景に応じた介入方法の検討が着実に行えていることは意義があることである。そのため次年度の研究、さらには次のステップのプロジェクトへと継続することで成果につながっていくと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
口腔にだけ注目した介入では本研究の目的が達成できないため、糖尿病の自己管理の全体を見据えた包括的な視点に立った評価方法の検討が必要である。現在、糖尿病の病態のコントロール指標であるヘモグロビン・エー・ワン・シー(HbA1c)の表記が国際化され、その管理目標値も変更されるなど、糖尿病の治療方法や評価方法が目覚ましく変化している状況にある。そのため、常に臨床との接点を持ち続け、糖尿病を持つ人が療養生活の中でどのような点に困難を感じているか、また、どのような口腔衛生行動を行っているかなどについてアンテナを張り巡らせることを継続する。そして、糖尿病を持つ人および臨床の医療職者との接点を大切にし、糖尿病教室や患者会に継続して参加することにより、本研究での目標、すなわち、長期療養中の糖尿病患者の口腔衛生行動の支援のための看護介入方法について、試案を提示し、臨床家からの意見を得て、介入につながる基礎固めとしたいと考えている。また、介入の評価方法についても慎重に検討していきたいと考えている。さらに、糖尿病患者を取り巻く医療職者が医科・歯科の垣根を越えて患者を中心として連携した医療が提供できるための方策について、糖尿病教室スッタフ会議などで多職種が集まる機会をとらえて検討事項として提示していくなかで、本研究の成果を臨床に還元してきたいと考えている。
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