2012 Fiscal Year Annual Research Report
老親介護する勤労夫婦の妻のワーク・ライフ・バランスとうつ予防の為の夫の介護力育成
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21592883
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
橋爪 祐美 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (40303284)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 介護うつ / ワークライフ・バランス / 勤労女性 / 高齢者 / 老親 / 介護 / 余暇活動 / 感情労働 |
Research Abstract |
老親介護する勤労女性(以下、女性)8人対象に介護うつ予防を目的とした①『私の介護ノート』を用いたストレス解放と②行動コントロール感獲得のための余暇活動習慣獲得を促す教育的プログラム(以下、プログラム)を実施した。介入終了後1年間、複数回に渡り②の定着と女性の抑うつ状態、老親の状況等について、質問紙の郵送による追跡調査を実施した。 プログラム終了時点で1人が老親の施設入所を理由に調査から脱落した。残り7人全員から追跡調査の返送があった(現在最終回の調査結果の返送待ち)。 プログラム実施後の時点で老親の要介護度は変わらなかったものの、終了後女性は全員老親の心身状態は悪化したと認識しており、老親の要する介護量は増えた可能性があった。プログラム終了時に一人の女性が夫から家事介護支援を受けるようになっていたが、プログラム実施前後で女性全員の提供する家事介護時間、勤務時間、余暇時間(睡眠時間、平日・週末の余暇時間)に有意差はなかった。プログラム介入効果として、女性の余暇活動習慣を、ある程度定着させた可能性が考えられた。 女性のストレスコーピング行動として、消極的行動(あきらめる等)をとらない傾向(p=0.039)が確認された。また、抑うつ感尺度はプログラム実施前後で差がなかった。プログラム介入効果として、女性の就労家事介護両立生活への前向きさを保持させた可能性が考えられた。 プログラム実施中複数回測定した抑うつ感は、女性3人(全対象者の43%)で全調査時においてカット・オフ値(16点)を上回っており、国内の大規模調査で確認されている在宅介護者のうちの、うつ状態の者の割合(25%)を超えていた。本研究で女性は全員がケア提供を職務としていたが職場や家庭で感情労働を行使していることが予測された。ケア提供を職務とする女性介護者においてバーンアウトを防ぐためにも余暇活動習慣確保が重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画した介入プログラムを概ね遂行することが出来、現在までの分析によって介入効果をいくつか確認することができた。 勤労女性介護者については従来、就労によって介護から解放されているため介護負担感の低い集団との見方があった。ケア提供を職務とする勤労女性介護者対象の先行研究は少ない。本年度の分析結果よりケア提供を職務とする勤労女性介護者は、職場や家庭において感情労働を行使しており、相当のストレス状態にあることが推測された。 勤労女性の老親介護と職業生活両立に関する悩みや不安は家庭の私的な問題であり、プライバシー尊重を重んじる日本人の態度的行動から、相談事業には繋がりにくい。本年度の結果から、勤労女性介護者を対象とする うつ病の早期発見や相談事業の推進が、産業保健活動の重要課題となることが見出された。
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Strategy for Future Research Activity |
女性に対する介入プログラム効果について標準化された尺度に関する統計学的分析と、別途プログラム実施時に録音した音声データについて逐語録を作成し、質的帰納的に分析し検討する予定である。 調査当初に計画していた女性の配偶者の協力についてはヒアリング調査への協力者が4名にとどまり、介入そのものへの協力は得られなかった。詳細は配偶者4名のインタビューデータの分析にて検討予定であるが、配偶者は勤労女性介護者と被介護者(老親)の板挟みとなってストレス状態にあることが予測され別途、精神的支援を要する対象であることが推測される。配偶者の調査協力のリクルートに課題が残った。 老親介護は私的な事柄である。また本研究に関する調査項目は老親介護における介護者である子ども世代夫婦の関係性等を探究する内容であり、プライバシー保持を尊重する日本人の態度的行動から、とくに配偶者への調査依頼には協力が得られにくいことが推察された。今後同様の研究を計画する際は、地域の男性介護者の集い等に参加する男性介護者等の協力を依頼する等、検討する予定である。
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