2010 Fiscal Year Annual Research Report
エタノール発酵糸状菌の発酵代謝フローの解明と糖化発酵同時進行への挑戦
Project/Area Number |
21612003
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
星野 一宏 富山大学, 富山大学大学院・理工学研究部(工学), 准教授 (20222276)
|
Keywords | バイオマス / 発酵 / 新エネルギー / 糸状菌 / メタボローム解析 / バイオエタノール |
Research Abstract |
我々が発見した糸状菌は、好気条件下で強力なエタノール発酵能を有する。このことから、エタノール発酵のキー物質であるPyruvateからTCAサイクルの代謝が不十分であることが示唆される。一方、エタノール代謝に必須のPyruvate decarboxylase(PDC)とAlcohol dehydrogenase(ADH)が強く発現していることが予想される。そこで、Pyruvate周囲の酵素について生化学的に検討すると共に、ペントース代謝経路の明を行うためにCE-TOFMSによるメタボローム解析を実施した。その結果、キシロースからエタノールへのフローを解明できたと共に、グリセルアルデヒド-3-リン酸の枯渇が問題であることが判明した。また、本研究で使用するMucor属の菌株は、デンプン系バイオマス、セルロース系バイオマスおよび油脂を基質として、生育可能であることから、これら物質を加水分解する酵素を分泌していることが示唆される。特に、ソフトバイオマスの主成分であるセルロースおよびヘミセルロースを利用できることは糖化発酵同時進行(CBP)を行う上では必須である。そこで、本菌株が有する加水分解酵素の分泌量を向上させるために、イオンビーム変異を実施し、Xyloaseおよびβ-glucanaseの高発現株を獲得した。このセルラーゼ高発現株を用いた同時糖化発酵により、100g/Lのアルカリ処理稲わらより21g/Lのエタノールを生産させることが可能であることが判明した。さらに、加水分解酵素を添加しないCBPを実施したところ培養24時間目に約1.0g/Lのエタノールを得ることに成功した。今後は、CBPの高性能化を図るために、セルラーゼ等の分泌向上を図る必要があることが示唆された。
|