2009 Fiscal Year Annual Research Report
黄砂感染症の健康影響評価を目指した実験的パイロットスタディ
Project/Area Number |
21651010
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Research Institution | Oita University of Nursing and Health Sciences |
Principal Investigator |
市瀬 孝道 Oita University of Nursing and Health Sciences, 看護学部, 教授 (50124334)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山元 昭二 国立環境研究所, 高感受性影響研究室, 主任研究員 (40230552)
吉田 成一 大分県立看護科学大学, 看護学部, 准教授 (40360060)
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Keywords | 黄砂 / 肺炎桿菌 / 肺の炎症 / 感染症 / 敗血症 / 好中球 / サイトカン・ケモカイン / 微生物 |
Research Abstract |
本年度はマウスの肺に感染症を引き起こす肺炎桿菌を用いて、これによって惹起される肺の炎症を黄砂粒子が増悪させるか否かを調べた。黄砂を予め加熱処理(380℃)によって微生物や毒素成分を除去し、この黄砂の2μgと20μgをICRマウスの気管内に1週間おきに4回気管内投与して、最終黄砂投与時(4回目)に肺炎桿菌と共に気管内に投与して、その翌日にマウスを屠殺して肺炎桿菌の感染性の強さ(敗血症を指標)と肺の炎症にに対する増強作用(好中球数を指標)を調べた。 その結果、肺の洗浄液(BALF)中の好中球数は肺炎桿菌を単独投与したマウスよりも黄砂+肺炎桿菌を投与したマウスの方が2~3倍高かった。黄砂の20μg投与マウスのBALF中の好中球数と2μg投与マウスを比較すると20μg投与マウスの方が高い値を示したが、その増加率は2μg投与マウスに比べてそれほど高くはなかった。またBALF中の好中球誘導にあずかるサイトカイン・ケモカインも肺炎桿菌単独投与マウスに比較して黄砂+肺炎桿菌投与マウスで高値を示した。一方、血中の肺炎桿菌数(敗血症)も肺炎桿菌単独群に比較して黄砂+肺炎桿菌で高い値を示していた。以上の結果から黄砂粒子は細菌による感染症を悪化させることが明らかとなった。この結果は黄砂付着細菌によって炎症が惹起した場合、その炎症が僅かな黄砂粒子量でも増強される可能性を示唆している。今後、実際に黄砂に付着していた細菌や真菌を用いて、こられの微生物によって惹起される肺の炎症を黄砂粒子が助長するか否かを調べる予定である。
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