2010 Fiscal Year Annual Research Report
西アフリカ・サヘル地域における農耕民と牧畜民の武力衝突の回避に関する方策の提案
Project/Area Number |
21651105
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大山 修一 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (00322347)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小崎 隆 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (00144345)
堀 信行 奈良大学, 文学部, 教授 (40087143)
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Keywords | サヘル / 民族共生 / 砂漠化問題 / ニジエール / 土地問題 / 干ばつ / 食糧問題 / 社会貢献 |
Research Abstract |
西アフリカ・サハラ砂漠の南縁に位置するサヘル地域では毎年、雨季になると、農耕民と牧畜民(フラニ、トゥアレグ)が放牧地をめぐって各地で衝突を繰り返している。ときに武力衝突によって、双方に死傷者が出ることもある。本研究計画は、農耕民と牧畜民のあいだで武力衝突が起きる要因を明らかにし、武力衝突を避けるための方策を提案することを目的としている。本年度に実施した現地調査の成果は、以下の通りである。牧畜民は雨季のあいだ、トウジンビエ畑の作物に対して食害を与えないよう、トウジンビエ畑を避けて、台地上の放牧キャンプに住み込んでいる。耕作地の拡大と荒廃地の発生にともなって、牧畜民が利用しうる放牧地が不足しており、牧畜民が放牧できる草地が新たに必要であること、そして牧畜民の管理する家畜が夜間に動き出し、畑のトウジンビエを採食することによって、農耕民と牧畜民が賠償金をめぐって口論した末、武力をともなう争いに発展するプロセスが浮かび上がってきた。フラニに聞き取りをしたところ、台地上やその周辺部に鉄製フェンスで囲いを作り、夜間の家畜囲いをつくることによって、夜間の家畜管理が容易になること、そして、その家畜囲いにおいて家畜が休息できるよう、生ゴミをまくことによって、砂を捕捉し、草地を再生させることが衝突予防のひとつの手がかりになるという知見を得た。生ゴミ施用にともなう緑化の有効性については圃場実験によって検証している。家畜囲いの面積は40m四方で十分であり、囲いを利用するのは、草本の生育する雨季の終盤が適していること、その草本は家畜の飼料となる一方で、夜間の野営によって家畜の糞が供給され、その糞が次年度に草本が生育する肥料となることが示唆された。ハウサの農村にも家畜囲いをつくることにも同意が得られ、この提案は、フラニ牧夫に高い評価を得た。周辺のフラニから鉄製フェンスとゴミ施用の要望が多く寄せられ、農耕民と牧畜民の衝突を回避する一つの有効な手段となる可能性が示唆された。
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Research Products
(8 results)