2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21652028
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
大野 雅子 帝京大学, 外国語学部, 教授 (80233229)
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Keywords | 英文学 / 18世紀 / 紅茶 / 女性 / 陶磁器 / 贅沢 / Alexander Pope / The Rape of the Rock |
Research Abstract |
本研究は、18世紀英文学における「女性」と「紅茶」の関係に着目することによって、英文学においてひとつの潮流を成す「女性蔑視」の伝統を分析することを目的としたものであった。Nahum Tateの"A Poemupon Tea"(1702年)やDuncan Campbellの"A Poem upon Tea"(1735年)などの詩において、紅茶と女性は密接に関連づけられているが、なぜそのような前提が生ずるに至ったのかは明らかではない。18世紀の英国において高価な輸入品であった紅茶を飲むという行為は、上流階級の女性の優雅な儀式であると同時に、贅沢を好む女性の悪習慣とも思われていた。今年度焦点を当てたのは18世紀の代表的詩人Alexander Popeの"The Rape of the Lock"(1714年)であるが、上流階級の男女の優雅な1日と巻毛略奪という事件を描いたこの詩において、"tea"は必ずしも詩のテーマではない。しかし、主人公の女性Belindaを賞賛しているかに見える詩の言葉の背後には、Belindaの贅沢好きが彼女のヒステリーと性欲と表裏一体であると考える詩人の皮肉が見え隠れする。同時代のJonathan Swifi,John Gay,Earl of Rochesterなどの詩においても、女性の性欲、ヒステリー、物質欲は三位一体となって表れる。このような分析を通じて、女性の紅茶好きはその激しい物質欲と性欲に起因するとされたのではないかと考えるに至った。紅茶とともに陶磁器も当時の女性にとっては物質欲の対象であった。"The Rape of the Lock"や他のいくつかの詩において見られる「ティーポットに変身する女性」というモチーフの象徴性に関してはいまだ明らかな解釈はなされていないが、女性が自分自身の欲望の対象物と一体化してしまうというアイロニーを表しているのではないだろうか。
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