Research Abstract |
本年度は,液体シンチレータに気体を高濃度で溶解させるための容器を作成し,それを用いて各種気体を含有した液体シンチレータを作成した.そして,この液体シンチレータの特質,特にシンチレータで重要な発光量と透過率の測定を行った.発光量の測定は,同時計測の技法を用いてセシウムの後方散乱事象を利用する装置の作成も行った。この結果,液体シンチレータ中にキセノンガスを導入すると,約5%の発光量の減少が見られること,そして飽和溶解度近傍(1~3重量%濃度)では,発光量とキセノン濃度に強い相関は見られず,発光量は誤差の範囲内で同程度であった.この結果は,液体シンチレータ中に高濃度に気体を溶解し,特色を持った液体シンチレータを作成するという本研究にとって好都合な結果であるので,次年度以降,加圧・冷却により飽和溶解度を超えた,大量のガスを液体シンチレータに導入し,その性質を調べる予定である. また,これと並行して,背の高い液体シンチレータ容器を作成し,シンチレータの水頭圧による飽和溶解度の依存性を調べた.未だ暫定的な結果であるが,水頭圧が高い程,つまり水深が深い程,飽和溶解度が増す傾向のあることが判明しつつある。この結果は,例えばカムランドのような大型で,従って水深の深い,ニュートリノ実験装置では,通常の大きさの装置に比べて,より多くの気体標的物質を導入できることを意味しており,非常に興味が持たれる.次年度以降,詳細に調べ,結果をまとめる。
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