2009 Fiscal Year Annual Research Report
分子地球学化学:固液界面での金属イオンの構造と水溶解性や生物必須性との関係
Project/Area Number |
21654082
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
高橋 嘉夫 Hiroshima University, 大学院・理学研究科, 教授 (10304396)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福士 圭介 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 助教 (90444207)
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Keywords | 分子地球化学 / XAFS / 内圏錯体 / 外圏錯体 / 内圏錯体 / 水酸化鉄 / マンガン酸化物 / モリブデン |
Research Abstract |
本研究では、元素の化学種を調べ、その結果が地球化学的にどのような意味を持つかを念頭において研究を進めた(分子地球化学)。特にこれまで適切な方法がなく、調べるのが困難だった固相や固液界面に存在する微量元素の化学状態を)線吸収微細構造法(XAFS)で調べることで、世界的に様々な研究成果が得られている。こうした立場になって、平成21年度は以下の研究を行った。 研究例1:海水中でオキソ酸陰イオンを形成しやすい元素は、表面が弱く正に帯電する水酸化鉄(FH)に濃集しやすいと考えられている(例:ヒ素)。この場合のイオンの局所構造は、FH表面と酸素を共有するかどうかで、内圏錯体と外圏錯体に大別される。我々の研究からオキソ酸陰イオンを形成する元素およびその同族の元素について、As、Sb、Te、Wなどは内圏錯体を、Se、Moなどは外圏錯体を形成しやすいことが分かった。内圏錯体vs外圏錯体の出来易さは、海水-鉄マンガン酸化物間の分配係数と相関し、外圏錯体を形成するイオンは海水側に分配しやすい。またFHへの分配に関する多元素間のシステマティクスは、陽イオンでは水酸化物イオンとの錯生成定数β_<OH>に、陰イオンではその酸のpKaで説明され、β_<OH>やpKaが低い場合に外圏錯体が形成しやすい。このように固液界面の局所構造は海水への元素の分配と密接に関連し、ひいては元素の生物必須性とも関連する可能性がある。 研究例2:例1で述べた内圏錯体と外圏錯体の違いは、同位体比の変動にも影響する。近年注目を集めている海洋のMo同位体比の変動は、MoがMnO_2に吸着される際に軽い同位体が濃縮するためと考えられている。本研究では、MnO_2にMo(VI)が吸着される際に、配位数4の溶存態MoO_4^<2->が最終的には配位数6のMo(VI)の内圏錯体として吸着されることが分かった。このことは、海洋環境でのMo同位体比の変動が酸化還元反応によるものではなく、配位数の変化によるものであることを示している。
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