2010 Fiscal Year Annual Research Report
分子地球化学:固液界面での金属イオンの構造と水溶解性や生物必須性との関係
Project/Area Number |
21654082
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
高橋 嘉夫 広島大学, 大学院・理学研究科, 教授 (10304396)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福士 圭介 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 助教 (90444207)
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Keywords | 分子地球化学 / XAFS / 内圏錯体 / 外圏錯体 / 内圏錯体 / 水酸化鉄 / マンガン酸化物 / タングステン |
Research Abstract |
本研究では、元素の化学種を調べ、その結果が地球化学的にどのような意味を持つかを念頭において研究を進めた(分子地球化学)。特にこれまで適切な方法がなく、調べるのが困難だった固相や固液界面に存在する微量元素の化学状態をX線吸収微細構造法(XAFS)で調べることで、以下の成果が得られた。 研究1:高感度な蛍光分光XAFS法による固液界面でのタングステン(W)の化学種解明 海水中でオキソ酸陰イオンを形成しやすい元素は、表面が弱く正に帯電する水酸化鉄に濃集しやすい。この場合のイオンの局所構造は、水酸化鉄表面と酸素を共有するかどうかで、内圏錯体と外圏錯体に大別される。我々の研究からオキソ酸陰イオンを形成するWについて、WのL3吸収端XAFSスペクトルは、NiやZnなどの干渉を受けて測定が困難であった。そこで、高感度な蛍光分光XAFS法を用いて、水酸化鉄やマンガン酸化物に吸着されたWO_4^<2->や鉄マンガン酸化物中のWO_4^<2->の化学種解析を行った。その結果、Wは水酸化鉄とマンガン酸化物のいずれにも内圏錯体として吸着されることが分かった。これは水酸化鉄には外圏錯体として吸着されるMoとは対象的である。WO_4^<2->は、4面体として溶存する一方、水酸化鉄やマンガン酸化物への吸着種は8面体であり、その際に大きな同位体分別が生じることが予想されることが分かった。 研究2:水酸化鉄に対するアンチモン(Sb)の共沈挙動解析 Sbの水酸化鉄への共沈現象を調べた。水酸化鉄中のSbは、Edge-sharing錯体とDouble corner sharing錯体をとることが分かった。これらから、SbはFeの8面体中のFeを置換できることが分かった。そのため、ferrihydriteが相転移してgoethiteに変化しても、Sbは水酸化鉄中にとどまることが分かった。これは4面体構造しかとらないAsとは対照的である。
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