2010 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質活性部位近傍構造の部位選択的ダイナミクス観測法の開発
Project/Area Number |
21655006
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
水谷 泰久 大阪大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60270469)
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Keywords | ラマン分光法 / 生物物理 / 時間分解分光法 |
Research Abstract |
昨年度改良を加えた測定装置を用いて、種々のヘムタンパク質およびモデル化合物のハイパー共鳴ラマンスペクトル測定を行った。ヘムタンパク質とモデル化合物とのスペクトルを比較することにより、ヘムに由来するラマンバンドを帰属すると同時に、ヘム近傍に存在するアミノ酸残基の観測の可能性を探った。 一酸化炭素結合形ミオグロビンで観測されたバンドのうち、1225 cm-1に観測されたバンドは、ヘムのモデル錯体では観測されなかった。このバンドはヘム近傍に存在するアミノ酸残基のラマンバンド強度が振電相互作用によって増強されている可能性がある。そこで、このバンド強度のpH依存性を調べたところ、pKa=4.5の解離基を仮定するとうまく説明できることがわかった。ヘムに結合した一酸化炭素の、Fe-CO伸縮振動およびCO伸縮振動バンドのpH依存性においても類似した振る舞いが報告されていることから、1225cm-1のラマンバンドはヘムの遠位側に存在するアミノ酸残基に由来すると考えられる。また、220cm-1付近に、ヘム鉄-近位ヒスチジン間の伸縮振動バンドに帰属可能なラマンバンドが観測された。このバンドは、ヘモグロビン、ペルオキシダーゼのほかのヘムタンパク質についても観測された。カタラーゼについて、ヘムに配位したチロシンに由来するラマンバンドを3本観測した。これらは、C-C伸縮振動(1522,1612cm-1)、C-0伸縮振動(1244cm-1)に帰属できる。ここに挙げたバンド以外にもアミノ酸残基由来と考えられるラマンバンドを検出することができた。
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