2010 Fiscal Year Annual Research Report
インジウムを配位原子とする遷移金属錯体の創製:多重結合の構築に向けて
Project/Area Number |
21655022
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
中沢 浩 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 教授 (00172297)
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Keywords | インジウム錯体 / インジル錯体 / インジレン錯体 |
Research Abstract |
インジウムは13族の元素で、InX_3は電子欠損化合物として知られており、強いルイス酸性を示すなど興味深い化合物である。インジウムを配位原子とする遷移金属錯体の大部分は同種の二核および三核錯体についてであり、単核錯体や異種金属複核錯体の合成例は非常に少ない。本研究では、インジウムを配位原子とする遷移金属錯体の合成と反応性を明らかにすることを目的とした。 [Cp*(CO)_3Mo]^-(Cp*=C_5Me_5)にピリジン(py)共存下InX_3(X=Cl, Br)を反応させると、pyで安定化されたインジル錯体Cp*(CO)_3Mo(InX_2py)が生成することを見出した。この錯体に[CpFe(CO)_2](Cp=C_5H_5)を反応させることによりMo-In-Fe骨格をもつ異核二核インジレン錯体を合成することに成功した。次にCpやCp*よりもかさ高いトリピラゾリルボレート(Tp)を配位子とする錯体[Tp(CO)_3Mo]^-とInX_3との反応を調べたところ、[Tp(CO)_3Mo-InX_3]^-(インジウム錯体)が高収率(92%)で生成することを見出した。Tpの誘導体である3,5-ジメチル誘導体(Tp*)を配位子とする錯体、および同様のW錯体を合成し、そのX線構造解析を行い比較したところ、Tp*錯体の方がM-In結合が短いことが分かった。これはこの錯体のM-In結合が金属からInへの供与結合であり、先に合成したインジル錯体やインジレン錯体の共有結合とは異なるタイプの結合であることが示された。このインジウム錯体の反応性を調べるため、[Tp(CO)_3Mo-InX_3]^-に3当量のAg(NO_3)を反応させたところ、[Tp(CO)_3Mo-ln(ONO_2)_3]^-が生成することをX線構造解析により確認した。この反応は遷移金属配位圏内でのインジウム置換基の交換というあまり前例のない反応である。In上のニトラト基は容易に置換可能であるので、種々のインジウム錯体の良い出発錯体となることが期待できる。
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Research Products
(33 results)