2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21655035
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
細川 誠二郎 Waseda University, 理工学術院, 准教授 (10307712)
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Keywords | 不斉合成 / 天然物合成 / 遠隔不斉誘導 / 不斉素子 / 鎖状立体制御 |
Research Abstract |
代表者が見出した遠隔不斉誘導反応は、従来、選択的にアンチ付加体を与えるものであった。本年度、基質を1-ピレニルアルデヒドとした場合にシン体が優先的に得られることを見いだした。嵩高いトリメチルアセトアルデヒドでは付加体は得られず、9-アントラアルデヒドや9-フェナントレンアルデヒド、4-ビフェニルアルデヒドにおいてもアンチ体が優先して得られることから、1-ピレニルアルデヒドの様な平面的かつ奥行きにも広がりをもつ基質のみがシン体を与えることが分かった。この特異な選択性の逆転に注目し、抗腫瘍性物質ベンゾピレノマイシンの全合成に応用した。ベンゾピレノマイシンはベンゾピレン骨格を持つ初めての天然物として単離された化合物であり,これまで合成例が少ないベンゾアントロン骨格を含んでいる。本全合成研究においてはまず、ベンゾアントロン骨格をアントラキノンから簡単に合成する方法を開発した。また、不斉炭素の構築においては、代表者の遠隔不斉誘導反応を用いて高収率で構築した。さらにベンゾアントロンからラジカル環化によってベンゾピレン骨格を合成する方法も実現した。この一連の工程によって、ベンゾピレノマイシンの効率的な不斉合成経路を確立し、当初の目的であった、遠隔不斉誘導反応の新たな一面を引き出しながらのポリケチド類の短工程合成を達成した。 加えて、アルデヒドの構造によらず、シン体を選択的に構築する条件も見出した。
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