Research Abstract |
固体反応場を利用する新しい高分子構造制御の手法を開拓するため,ジエンならびにジアセチレンモノマーの薄膜結晶を作製し,ポリマー構造の制御を試みた。今年度は,薄膜結晶中のポリマーの配向制御と垂直型モノマー積層膜の設計について研究を行った。無機塩単結晶上へのジエンモノマーの真空蒸着を行い,蒸着条件の最適化を行い,モデルから計算される格子間隔とモノマーの最適スタッキング距離の関係から,ムコン酸置換ベンジルエステルモノマーはKCIの(001)面でエピタキシャル結晶成長が起こり,結晶面上の特定の方向の面間隔とモノマー結晶のb軸の長さが一致することを見出した。面間隔のミスフィットが大きくなるにつれて結晶成長の機構は複雑になることがわかった。つぎに,蒸着膜への紫外線照射により重合を行い,薄膜を固定化した後,基板を溶解除去し,薄膜状の高分子膜を単離し,電子顕微鏡ならびにX線回折により構造の解析を行った。また,モノマー配向膜に偏光フィルターを通して紫外線照射することにより,選択的重合を行い,特定の方向にポリマーが高度に配列した薄膜を作製することに成功した。さらに,蒸着基板の材質の選択ならびに化学的な表面処理を行うことで,モノマー分子を垂直方向に積層させることを試みた。石英基板の表面を官能基を含むシランカップリング剤で処理し,分子配向制御試みたところ,従来型と異なる分子配置の薄膜結晶が得られることを見出し,現在,積層構造についての詳細な構造解析を継続して進めている。また,ジエンモノマー以外の不飽和化合物の薄膜結晶の作製にもついても予備検討し,蒸着可能でありかつ重合可能なモノマーの探索を行った。
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