Research Abstract |
微小な空間の内部に熱源を持ち,これを動力源とするデバイスへの展開を念頭に,本研究では,貴金属ナノ粒子を用いた時間的・空間的に発熱量をフレキシブルに制御することが可能なナノヒーターの実現可能性を明らかにする.前年度までに,独自に開発した局所プラズモン共振器と名付けたナノ構造を用い,ナノ構造を制御することでナノ粒子の発熱量を空間的に制御できることを実証した.平成23年度は,発熱の時間的制御性を確認するため,局所プラズモン共振器の光音響効果を調べた.ナノ粒子の発熱は,光によってナノ粒子中の自由電子が激しく振動するとことによるジュール熱によるものである。Auの自由で子の緩和時間が10^<-14>秒のオーダーなので,発熱量が定常状態に達するのにピコ秒あれば十分である.一方,放熱は輻射と伝熱によるわけであるが,一つの粒子の体積が6×10^<-22>m^3程度であるので熱容量は小さく,降温過程も比較的高速に進むと考えられる.また,局所プラズモン共振器では,Auナノ粒子が断熱性に優れた多孔質SiO_2層に形成されているため,熱を周囲の流体に効率よく伝えることが期待できる.このことを確認するために,波長785nmのレーザ光を,その波長に対する反射率の異なる照射し,高性能のマイクロホンを用いて音圧の変化を調べた.入射光はファンクションジェネレータを用いて1-100kHzの周波数で変調した.その結果,吸収率の大きな局所プラズモン共振器からは100kHzの超音波領域まで比較的フラットな周波数特性の音波の発生を確認することができた.局所プラズモン共振器の光音響効果は,グラファイトやSiウェハと比べると1-2桁大きな信号が得られることも確認した.以上の様に本研究では,局所プラズモン共振器の光-熱変換特性を利用した新しいナノデバイス実現のための,基礎的な知見を得ることができた
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