2010 Fiscal Year Annual Research Report
トキシコゲノミクスによる新規機能性ナノ高分子(デンドリマー)の毒性評価
Project/Area Number |
21656129
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岡部 聡 北海道大学, 大学院・工学研究院, 教授 (10253816)
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Keywords | デンドリマー / 機能性高分子 / DNAマイクロアレイ / トキシコゲノミクス / 毒性評価 |
Research Abstract |
PAMAM(polyamidoamine)デンドリマーの生物学的活性は世代が大きくなる程高くなるため、毒性は世代に強く依存すると考えられる。世代依存毒性を含むPAMAMデンドリマーの毒性のより詳細な解明が必須であり、本研究ではPAMAMデンドリマーの毒性及びその発現メカニズムの解明を目的とした。ヒト肝癌由来細胞株HepG2細胞を用いて、PAMAMデンドリマーG4-G7の毒性評価を行った。全ての試験通して、PAMAMデンドリマーとBSAの相互作用による影響を除く為、PAMAMデンドリマーの溶媒にHBSS(Hank's balanced salt solution)にHEPESを10mMとなるように加えたものを用いた。また、暴露濃度にはNeutral red(NR)assayで細胞生存率が80%となる濃度をそれぞれ用いた。その結果、PAMAMデンドリマーの世代依存的な細胞毒性を確認した。同じNR assayで細胞生存率が80%となる濃度でも、世代の大きいPAMAMデンドリマーほどROSの産生能が高いことが明らかとなった。ROS産生は120minで最高値をとった。さらに、DNA損傷性を評価するために、H_2O_2をPositive Controlとしてコメットアッセイを行った。実験結果の解析は、尾の長さ、面積、濃さにより、尾の無いもの(I)から,核内のDNA全てが断片化した頭部の無いものあるいは頭部の極微少なもの(V)までI~Vの5段階に分けて評価した。その結果、AMAMデンドリマーで処理していないHBSS(negative control)の細胞群では、クラスIが大部分であった(75.2%)のに対し、PAMAMデンドリマー暴露系ではクラスIが40%~55%と低く、G7で最低値の40.4%%となった。また、G6,G7では損傷の重篤であるIV,Vの割合が高く、コメット値はG5を除いて世代が増加するに従い、増加する傾向が認められた。以上の結果より、PAMAMデンドリマーがDNA損傷性を有しており、DNA損傷の程度は世代が大きい程より重篤であることが明らかとなった。また、1mM H_2O_2とPAMAMデンドリマーG6はROS産生量がほぼ同程度であったにも関わらず、DNA損傷レベルはH_2O_2の方がPAMAMデンドリマーに比べかなり高い値となった。このことから、酸化ストレスがPAMAMデンドリマーの毒性の直接的な原因ではない可能性が示唆された。
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