2009 Fiscal Year Annual Research Report
「構造の扉」と「見える制振部材」を用いた建物損傷検知システムの開発
Project/Area Number |
21656136
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中島 正愛 京都大学, 防災研究所, 教授 (00207771)
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Keywords | 健全度評価 / 塗料 / 横座屈 / 制振部材 / 耐震設計 / 地震防災 |
Research Abstract |
本研究は、「高機能社会に適合する建築構造のあり方」を命題に、『建物の機能性の向上を図るとともに、"どこが壊れたか、どのぐらい壊れたか、どう直せばよいのか"という質問に即座に応答できる仕組み』を、(1)「構造の扉(とびら)という発想」、(2)構造の扉の裏にあるスリット入り鋼板の制振部材としての利用、(3)「塗料の剥離」や「構面外座屈の痕跡」利用によるスリット入り鋼板の損傷度検知部材としての適用、を軸に提案する。本研究の遂行にあたって、(A)スリット入り鋼板のスリット配置:(B)鋼板塑性化を検知するための塗料の同定と構面外座屈の特定:(C)制振機能と損傷検知機能を有する鋼板制振部材の検証、の3課題を設定する。 初年度では、(A)に取り組むともに、(B)にも着手した。課題(A)については、従来の均等間隔スリットではなく間隔を不均等にすることから、水平変形の増加に伴って鋼板の塑性化が徐々に拡がってゆく様子を再現できることを明らかにし、また塑性化拡大率とスリット間隔の関係を詳細な有限要素法解析から定量化した。さらにこの解析から得られた最適スリット間隔をもつ複数の鋼板試験体に対する一連の準静的実験からその性能を確認し、ここで提案するスリット配置をもつ鋼板は制振部材としても十分なエネルギー消費能力を有することを実証した。課題(B)については、鋼板制振部材の最大水平変形と塑性化領域とに一対一の対応を持たせるべく、塑性域の拡がりを塗料の剥離と関係づけることを考え、それに適した塗料の同定と配合を多数の引張試験から検討した。また各スリット部の構面外横座屈の発生がスリット間隔によって制御できること、また生じた横座屈は元に戻らず永久変形として後続の載荷に対しても残ることに着目し、スリット間隔と横座屈発生とそれが発生する水平変形との関係を結びつけるための要素実験も併せて実施した。
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