2011 Fiscal Year Annual Research Report
「植物界」の新概念と新分類体系を構築する系統学的研究
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21657024
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野崎 久義 東京大学, 大学院・理学系研究科, 准教授 (40250104)
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Keywords | 大系統 / 大分類 / 植物界 / 色素体一次共生 / 色素体二次共生 / 細胞内共生的遺伝子水平伝達 |
Research Abstract |
本年度は、ミドリムシ(学名Euglena gracilis)のゲノム情報を対象にして、東京大学医科学研究所のスーパーコンピュータを使った大規模分子系統解析プログラムを独自に構築し、祖先的原生生物、共生藻類、その他に由来すると考えられる遺伝子のグループに振り分ける解析を行うことで、この「その他」の遺伝子がどのような進化的由来を持つかを検証し、太古の遺伝子水平伝達の痕跡とも言うべき遺伝情報を抽出することを試みた。その結果、ミドリムシの核ゲノム(祖先的原生生物に由来する)には、他の藻類の持つ遺伝子と類似性を持つ遺伝子が多く保存されており、その中でも、紅藻に由来する葉緑体を持つ二次植物(ここでは紅色系二次植物と呼びます)と進化的に起源が近いと考えられる遺伝子が複数見つかってきた。これはミドリムシ藻の祖先で緑藻の二次共生以前の隠された紅色系二次植物の三共生の存在を示唆した。 緑色系二次共生藻のもう一つの系統、クロララクニオン藻はミドリムシ藻とは独立した系統の宿主真核生物に緑藻が二次共生して誕生したと考えられるが、色素体共生由来の核コード遺伝子の中には緑色植物起源でないものがあることが最近のゲノム情報の解析から明らかになりつつある。Phosphoribulokinase(PRK)遺伝子は保存的でシアノバクテリアを祖先とする典型的な核コード光合成遺伝子であるが、先行研究では上記2系統から得られた遺伝子がともに緑藻起源でないことが示唆されている(Petersen et al.2006,JME)。しかし、解析されたサンプルがそれぞれで1種であったために、祖先段階の遺伝子水平伝達か最近の補食等による偶発的なものかが議論できなかった。本年度、我々は緑色系二次共生藻の2系統の種数を増大したPRK遺伝子の系統解析を実施した。その結果、系統的位置と挿入/欠損配列から、ミドリムシ藻綱の2属2種のPRKが黄色植物起源で、クロララクニオン藻綱の3属3種のPRKが紅藻起源であることが明らかになった。
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Research Products
(6 results)