Research Abstract |
イネの穂を切り取り液体培地に漬ける穂培養法では,一週間は圃場と同等の子実乾物増加がみられたものの,それ以降はほとんど停止する(Kobataetal.,2001).そこで本研究は,穂培養条件下で子実成長の早期停止がおきず,成長を長期に渡り維持できる穂培養システムを新たに開発することを目的とした.作期を数回にずらして水田栽培したコシヒカリを出穂約5日後に下位節間で切除し,アンチホルミンで穂首以下を滅菌し,穂の基部を培地につけて培養した.培地には60gl^<-1>のスクロースと1/2MS培地を用いた.恒温器内において,培地を培養中カビが発生しないように冷蔵庫内で5℃に保ち,穂は気温30℃,光強度84μmol・m^<-2>s^<-1>で24時間照射した.実験は2回繰り返した.従来のように穂軸の第二節間から培地に漬ける区(対照区),穂軸の維管束断面を大きくするために従来の穂首節間より下位節間から培養液に漬ける区(太茎区),また,穂を長時間高糖濃度の培養液に漬けることによるストレスを避けるために,穂軸下端を二つに切って半分に培地半分を蒸留水に漬けた区(茎割区)と,朝8時から16時まで培地に漬け16時から翌朝8時の間は暗黒条件で蒸留水に漬ける区(漬替区)を設けた.その結果,従来の穂培養法で培養した穂(対照区)に比べ,下の節間から培養した方(太茎区)が2週目も平均一籾重は増加した.ただし,それ以降同時期の圃場における一籾増加には及ばなかった.また,漬替区では,子実成長期間をさらに延ばしたものの培養当初から籾重の増加は低かった.以上から,従来の穂首節間よりさらに下位節間を培養液に漬けて培養することは子実の乾物増加継続に有効な手段と考えられる.しかし,さらに成長持続期間を高く長く延ばす必要がある.茎を漬け替えて培養する方法では,圃場の子実重よりかなり低い値となったものの子実の成長停止は延長されたことから,下位の節間から残して茎を長くした穂で,培養液と蒸留水に漬け替えて培養をすれば,より圃場に近い子実重増加を長期間維持できると期待される.これらの成果を学会において発表した。
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