2009 Fiscal Year Annual Research Report
環境に負荷をかけない医工学生体材料の構築技術の開発
Project/Area Number |
21658038
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
辻 融 Keio University, 先導研究センター, 講師 (40348850)
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Keywords | 蛋白質工学 / 進化分子工学 / 生体材料 / 結晶成長 / セルロース / バイオマス / 環境低負荷 / 有機無機複合材料 |
Research Abstract |
本研究では、タンパク質がもつ無機結晶の「結晶成長制御力」を利用し、ハイドロキロシアパタイト(HA)含有生体材料の、生物学的・力学的性質の制御を試みる。その際に、セルロースなどのバイオマスを有機基質として用い、環境負荷が少ない材料構築の開発を試みる。 骨はコラーゲンファイバーとHA微結晶の、ナノ複合構造材料である。骨形成の初期過程では、細胞外マトリクスの酸性タンパク質が、コラーゲンに結合しつつカルシウムイオンを濃縮し、HA結晶形成を促進する。本研究では、まずこの過程の模倣を目指す。ただし、コラーゲンファイバーではなく、セルロースのファイバーを有機基質として用いる。そこで、組み換えDNA技術を用いて、Trichoderma reesei由来のcellobiohydlase IとIIからセルロース結合ドメインを抽出して連結し、酸性蛋白質との融合蛋白質を構築した。 また、HA結晶はa面とc面をもつ(a面は六角柱の側面、c面は底面に相当する)。それらは、異なる原子配列をもつ結晶面であるため、相互作用するタンパク質の種類が異なる。したがって、異なる晶癖をもつHAは、細胞が分泌する異なるタンパク質と相互作用し、細胞の増殖や分化の様式に異なる影響を与えると考えられる。したがって、人工的に構築したタンパク質またはペプチドを用いてHA結晶の晶癖を変化させ、複合材料の生物学的性質を制御できる可能性がある。そこで進化分子工学的手法により、HA結晶の特定の結晶面に結合するペプチドの取得を試みた。6ラウンドの選択実験の後に、いくつかの特徴的なアミノ酸配列をもつペプチドの取得に成功した。 次年度は、構築した蛋白質を用いてセルロース表面へのHA形成を試みる。また、その際に取得ペプチドを混合し、結晶の晶癖の制御を試みる。
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