Research Abstract |
アラキドン酸カスケードを指標とする海藻の化学分類法の開発のために,アラキドン酸(AA)を含む数種の海藻を国内外から入手して,その脂肪酸組成を明らかにするとともにエイコサノイド成分を検索した。 1.以下の11試料を採集して分析に用いた。オゴノリGracilaria属(ニュージーランド産G.chilensis,韓国産G.chorda,大分産G.vermiculophylla,石垣島産G.arcuata,久米島産G.tikvahiae),広島産クロモズクSauvageaugloia ikomae,秋田及び新潟産ホンダワラSargassum fulvellum,久米島産トゲノリAcanthophora spicifera,久米島産ヒラアオノリEnteromorpha compressa,秋田産ウミゾウメンNemalion vermiculare。 2.緑藻のヒラアオノリを除くすべての種からAAまたはエイコサペンタエン酸(EPA)が著量検出された。特に,AAはオゴノリに多く存在し(全脂肪酸中40~50%),EPAはウミゾウメンで40%と高い値を示した。 3.各藻体のエイコサノイドを分析した結果,G.vermiculophyllaからはプロスタグランジン類(PG)が多く検出されたが,G.chilensisとG.chordaからはPGは全く検出されず,アラキドン酸のリポキシゲナーゼ代謝物と考えられるヒドロキシポリエン酸(diHETE)が多く見出された。 4.G.chilensisから新規エイコサノイドを見出し,構造を5,8-dihydroxyeicosa-6(Z),9(E),11(Z),14(Z)-tetraenoic acidと決定した。G.tikvahiaeより,海藻には極めてまれな環状脂肪酸を見出した。 以上の結果から,脂肪酸組成の類似する海藻でもエイコサノイド組成は大きくことなり,化学分類の新しい指標としてエイコサノイド(アラキドン酸カスケード)が有用であることが明らかになった。
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