2009 Fiscal Year Annual Research Report
Kampo-Kinome解析によるケミカルバイオロジーの展開
Project/Area Number |
21659025
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
櫻井 宏明 University of Toyama, 和漢医薬学総合研究所, 准教授 (00345571)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 謙 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 准教授 (60418689)
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Keywords | 漢方薬 / 生薬 / Kinome / リン酸化 / ケミカルバイオロジー / 細胞内情報伝達 / ライブラリー / スクリーニング |
Research Abstract |
漢方・生薬をはじめとする天然薬物には多様な化学成分が含まれており、個々の化学成分の生物活性が複合的に薬効を規定している。その複雑さ故、活性を単一のターゲット分子に対する効果として捉えるのではなく、生体システムに対する多面的効果として把握していくことが重要であると考えられる。したがって、漢方・生薬の効果を多面的に解析する目的において、Human Kinomeを対象とした解析は、その効果をシグナル伝達の観点から統合的に理解するために極めて有効な手段であると期待される。 本年度は、漢方薬の一つである十全大補湯の構成生薬10種類について、その水エキス(0.1mg/ml)のプロテインキナーゼ阻害活性を検討した。Human Kinome518種の中から進化系統樹上での多様性を考慮して、チロシンキナーゼ20種とセリン・スレオニンキナーゼ30種、計50種を対象とした。その結果、桂皮や芍薬はほとんどのプロテインキナーゼに対して阻害効果を示した。甘草、当帰、茯苓にも阻害効果が認められた。一方、黄耆や人参にはほとんど阻害活性が認められなかった。プロテインキナーゼから見ると、GSK3βが全てのエキスによって阻害されたが、逆にIRAK4はどのエキスも阻害効果を示さなかった。さらに、PAK4は全てのエキスによって活性の増強が認められた。 以上のように、Human Kinomeを対象とした解析は、個々の生薬によって異なった活性を示すことが明らかとなった。生薬の種類を広げるとともに、細胞内でのタンパク質リン酸化に対する効果(パスウェイ解析)を実施することにより、漢方・生薬の生物活性の規格化に応用できる可能性が考えられた。さらに、個々の興味深い活性についても、成分同定によるケミカルバイオロジーへの展開も期待される。
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