2009 Fiscal Year Annual Research Report
新興感染症菌ヘリコバクターシネディの感染病態と動脈硬化・心疾患との関連性の解析
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21659109
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
赤池 孝章 Kumamoto University, 大学院・生命科学研究部, 教授 (20231798)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 竜哉 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 助教 (30419634)
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Keywords | 新興感染症 / ヘリコバクターシネディ / 心臓疾患 / 動脈硬化症 / 血清診断法 / 免疫組織染色 / 多変量解析 |
Research Abstract |
Helicobacter cinaediは1984年にヒトへの感染が初めて確認された新興感染症菌で、動物の腸管や肝臓にも生息する人畜共通感染症菌である。これまでは日和見感染症としての報告例がほとんどであったが、我々は、本菌による術後敗血症のアウトブレイク事例を報告し、これに前後して、近年は文献的にも免疫能が正常な人への感染例が散見されるようになった。本菌は、院内感染症とくに敗血症の起因菌として近年注目されているが、その感染病態については不明な点が多い。さらに本菌は特殊な培養条件を必要とするため検出が難しく、多くの症例が見落とされている可能性も高い。そこで我々は本菌の主要抗原蛋白質遺伝子(HcMAP30)を同定し、その組換え蛋白質を用いたELISAによる血清診断法を確立した。最近、H. pyloriと、自己免疫性疾患や動脈硬化症などの非消化管疾患との関連が話題になっており、H. cinaediについても同様に様々な病態に関連している可能性がある。そこで、動脈硬化症・心臓疾患とH. cinaedi感染との関連に注目し、我々が確立した血清診断法による臨床疫学解析を行なった。まず、研究への同意が得られている上室性不整脈(心房細・粗動、心房性頻拍症)患者群(92症例)のH. cinaedi抗体レベルを測定し・非不整脈群(42例)と比較したところ、不整脈群において有意に高い傾向がみられた。多変量解析にて・上室性不整脈のみが、他の因子(性別、年齢、高血圧、糖尿病、高脂血症)と独立して有意に抗体レベルの上昇に寄与する要因であることが分かった。次に、抗H. cinaedi抗体を用いて、ヒトの動脈粥状硬化組織の免疫病理学的解析を行なったところ、CD68陽性マクロファージに強い陽性所見が得られた。以上の知見は、不整脈や動脈硬化症の病因に、H. cinaediの感染が関与していることを示唆しており、心臓血管疾患における新しい診断・治療法の開発への応用が期待できる。
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Research Products
(55 results)