2010 Fiscal Year Annual Research Report
最終分化細胞の前駆細胞への転換 ー幹細胞を標的としない組織再生の試みー
Project/Area Number |
21659454
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
池田 正明 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 准教授 (20193211)
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Keywords | iPS細胞 / 最終分化細胞 / エピジェネティック / 核マトリクス結合因子 / 核内高次構造 / 細胞増殖 / 前駆細胞 / クロマチン |
Research Abstract |
最終分化をした細胞は細胞周期のGO期に不可逆的に停止しており,もはや分裂しないと考えられている。この様な細胞の性質の変化に関与しているエピジェネティックによる遺伝子発現の制御を改変する手法は知られていない。そこで本研究は、組織中の最終分化した細胞の増殖能を活性化し、盛んに分裂する前駆細胞に転換させることを試みる。具体的には、核マトリクス結合因子DRIL1の発現を一過性にコントロールすることにより、最終分化細胞におけるエピジェネティックな増殖抑制制御を解除し、増殖能の高い前駆細胞に転換することを目指す。 昨年度までの結果から、本研究の目的を達成するためには、DRIL1と類似したDRIL2の発現も抑制する必要があることが示唆された。そこで今年度はsiRNAを用いてDRIL2をノックダウン(KD)する系を確立し、増殖抑制やアポトーシスに関与しているp53癌抑制遺伝子の機能に対する効果を検討した。その結果、(1)DRIL2のKDによってアポトーシス関連p53標的遺伝子の発現が転写レベルで抑制された。(2)さらにDRIL1とDRIL2の両方をKDすると、DNA傷害によるアポトーシスが明らかに抑制されることを見出した。以上の結果から、DRIL1とDRIL2はp53の機能に重要な役割を担っていること、本研究の遂行のためにはDRIL1とDRIL2を両方KDする必要があることが明らかとなった。現在、DRIL1、DRIL2単独およびその両方に対するsiRNAをヒト正常細胞に導入した後、種々の幹細胞培養条件下で培養し、未分化幹細胞あるいは前駆細胞への分化転換が起きるかどうかを調べている。
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