2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21659529
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木下 彩栄 京都大学, 医学研究科, 教授 (80321610)
|
Keywords | 認知症 / 在宅支援 / IT / テレビ電話 |
Research Abstract |
我々は、認知症の患者や家族介護者の在宅療養支援のツールの一つとしてInformation Technology(以下ITと略)の有効性に着目してきた。ITは本邦において、「血の通わない技術」とみなされることが多く、GPS機能や見守りネットといった分野で俳徊老人の事故予防などに使用されつつあるものの、未だ一般的には浸透していないのが現状である。しかしながら、患者及びその家族の精神的ケアのためには、双方向性にコミュニケーションが可能な「血の通った技術」としてのITを導入していく必要がある。また、医療費の高騰が問題となっている昨今、新たに機器を開発するのではなく、既存のインフラを利用して、医療費を抑制していく必要もある。これらの二点を同時に達成するために、「既存のインフラを利用した双方向性の在宅支援システム」を立ち上げるべく、本課題を立案した。用いるテレビ電話のツールとしてNTT西日本のフレッツフォンを利用し、京大病院に外来通院する認知症患者を対象群と介入群に分けて、各々各10名ほど3カ月の介入試験を行った。介入は週1回30分で、テレビ電話において簡単な認知機能検査や認知リハビリ、また家族介護支援を行った。認知機能テストなどでは統計的に有意な効果はみられていないが、自覚的幸福感のスコアが増加していた。家族および患者からは「安心感がある」「生活に張りが出た」「相談できて良かった」という声が多く聞かれており、有効性があることが実証された。操作は簡便で脱落症例はなかった。この研究結果により、テレビ電話での介入が有効であることが確認されたので、期間内に認知症患者に対する服薬指導をテレビ電話で行う研究も立ち上げることができた。このように、既存のインフラを用いた安価なテレビ電話を用いたシステムは、在宅医療を支援するために簡便かつ有効なシステムであることが実証され、今後大規模に実施するためのインフラの整備が望まれる。
|