2011 Fiscal Year Annual Research Report
南極氷床コア分析と気候モデリングに基づく氷期・間氷期の気候変動メカニズムの解明
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21671001
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
川村 賢二 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (90431478)
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Keywords | 気候変動 / 南極氷床コア / 古気候 / 氷期・間氷期 / 温室効果ガス / 物質循環 / 環境変動 |
Research Abstract |
氷床コア分析に関しては、国立極地研究所における空気抽出・分析装置の改良と試験を継続実施した。研究協力機関の一つである東北大学が所有する気体解析設備が震災の被害を受けたので、その復旧や精度確認等を実施した。年代決定のためのO_2/N_2分析については、東北大学の現有装置を復旧することと平行して、国立極地研究所が所有する質量分析計を本研究に使用できるよう調整し、良好な精度が出せるまでに至った。南極ドームふじ近傍において採集したフィルン空気については、窒素と希ガスの分析を実施するための分割手法や分析手法の開発を実施した。当初計画以上の進展事項として、これらの分析に加えて、CH-4循環メカニズムの解明のため、最終間氷期から現在にかけてのCH濃度と水素・炭素同位体比の分析を実施し、気候変動に伴うCH-4放出源強度の変動を推定した。 氷床コアの年代決定については、O_2/N_2データによる深度一年代の束縛点を確立し、その間は直線内挿する簡易的な手法により、70万年間のO_2/N_2年代を構築した。この年代を元にしたデータ解析(気温時系列復元と、退氷期と軌道要素変動との統計検定)を実施した。その結果、歳差の効果が地軸傾斜角の効果より有意に退氷期と関連していたことが分かった。これは、地軸傾斜角が中心であるとする近年影響力のある説を覆す結果である。また、氷床コア年代を海底コアに移す手法の開発も実施した。 気候・氷床モデルでは、CO_2濃度を不変とした感度実験を多数実施し、各種の軌道要素に対する氷床の応答周期を、特に10万年周期に着目して調べた。その結果は、ドームふじ氷床コアのデータから導かれた結果(上記)と整合的であった。また、氷期や間氷期といった異なる気候条件における淡水流入実験を多数実施し、ドームふじコアの気温指標と合わせ、過去70万年間の千年スケール変動と氷期サイクルとの関連について議論を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
共同研究機関の設備に震災の影響があり、温室効果気体濃度の分析計画を変更したが、分析設備は比較的速やかに復旧したうえ、当所の計画に加えて温室効果気体の同位体の分析も実施した。極地研における分析装置の開発も計画以上の項目について進めている。また、コアの年代決定、気候・氷床モデル実験も順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
ドームふじコアの気体成分の分析を継続する。各気体により必要とされる分解能や最適な空気抽出方法が異なるため、複数ある設備を最適に稼働させる。また、データを共同研究者と共有して議論し、分析計画にフィードバックすることで、必要なデータを効率よく取得する。フィルン空気試料を分析し、現在のフィルンにおける空気の分別過程や取り込み過程に関するプロセス研究を進める。O_2/N_2データを用いた年代決定の計算手法を確立し、過去7回の退氷期の開始の年代を推定する。退氷期と軌道要素変動との関係における統計的有意性を検定するとともに、気候や物質循環、軌道要素の変動の順序を確立する。また、気候・氷床モデルによるシミュレーションを70万年に拡張し、氷期サイクルやの間氷期の持続期間の決定要因を考察する。
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Research Products
(26 results)
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[Journal Article] Gas transport in firn : multiple-tracer characterisation and model intercomparison for NEEM, Northern Greenland2012
Author(s)
C.Buizert, P.Martinerie, V.V.Petrenko, J.P.Severinghaus, C.M.Trudinger, E.Witrant, J.L.Eosen, A.J.Orsi, M.Kubino, D.M.Etheridge, L.P.Steele, C.Hogan, J.C.Laube, W.T.Sturges, V.A.Levchenko, A.M.Smith, I.Levin, T.J.Conway, E.J.Dlugokencky, P.M.Lang, K.Kawamura, T.M.Jenk, J.W.C.White, T.Sowers, J.Schwander, T.Blunier
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Journal Title
Atmos.Chem.Phys.
Volume: (印刷中)
Peer Reviewed
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[Journal Article] A new multi-gas constrained model of trace gas non-homogeneous transport in firn : evaluation and behavior at eleven polar sites2011
Author(s)
Witrant, E., Martinerie, P., Hogan, C, Laube, J. C, Kawamura, K., Capron, E., Montzka, S.A., Dlugokencky, E.J., Etheridge, D., Blunier, T., Sturges, W.T.
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Journal Title
Atmos.Chem.Phys.Discuss.
Volume: 11
Pages: 23029-23080
DOI
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