2011 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ構造化糖鎖素子を介した機能糖鎖集密化バイオマテリアルの創出
Project/Area Number |
21678002
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
北岡 卓也 九州大学, 大学院・農学研究院, 准教授 (90304766)
|
Keywords | 糖鎖 / 酵素反応 / 自己組織化 / 分子配向 / 密度制御 / 細胞培養 / バイオインターフェース / ナノ粒子 |
Research Abstract |
ナノ・バイオ研究の急速な発展に伴い、医工学分野で注目の糖鎖機能材料の開発機運が高まっている。本研究では、独自の「非水系酵素触媒反応による糖鎖合成」と「構造性糖鎖の集積造膜技術」により、細胞表面の糖鎖ナノ集積構造の人為的模倣によるバイオ機能の高発現に向けて、樹木細胞壁を構成するセルロースを「ナノ構造化素子」として用いる新コンセプト「グライコナノアーキテクトニクス」の研究基盤の構築を目指している。本年度は、以下の重要な成果を得た。 1.酸アシスト非水系酵素触媒反応による糖鎖合成 無保護・未修飾の構成糖から、一段階で多糖類や複合糖質を合成可能な非水系酵素触媒反応は、その低収率(~5%)が課題であった。しかし、非プロトン性有機溶媒中にわずかな有機酸を共触媒として添加することで、飛躍的な収率向上を達成した(セルロース合成で約30%、キチン合成で約80%)。これは、酸触媒が基質糖のC1位を一時的に活性化することによる協奏的触媒効果と推測される。 2.糖鎖ハイブリッド集積界面の設計と生体応答制御 セロヘキサオースとキトヘキサオースの還元末端選択的S誘導体化と金基板への自己組織化により、様々な糖鎖密度を持つインターフェースを設計した。キチンを認識するToll-like receptor 2 (TLR2)を有するHEK293細胞を用いてアジセイしたところ、膜表面のキチン密度応答的に自然免疫系のシグナル伝達が働き、細胞炎症挙動が変化する現象を見出した。さらに本系では、キチン密度0.12chains/nm^2の条件で最も高い細胞応答性を示し、これはTLR2の刺激受容スポットの占有面積と相関性が見られた。逆に、キチン密度を高くすると細胞応答性は著しく低下した。すなわち、密度制御可能な糖鎖集積膜を細胞表面に認識させ、その生理応答現象をマテリアル側のナノ構造設計で操作する本研究課題の本質に迫る成果を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は独自の「非水系酵素触媒反応」と「構造性糖鎖集積技術」からなり、その双方について非常に重要な成果を得た。ブレンステッド酸を非水系で酵素反応と組み合わせる発想は世界初であり、分子ではなく界面を細胞に認識させるコンセプトもオリジナリティが高い。グライコナノアーキテクトニクスの構築に向け、大きく前進した。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は上記の独自技術の深化とコンビネーションによる新材料創出を柱としている。5年の研究期間のうち3年が経過し、それぞれの技術は大きく進歩したが、組み合わせ例としてはセルロースフィルムおよび紙への直接糖鎖修飾など、成功例はそれほど多くはない。そこで、今後の推進方策としては、(1)新規糖鎖分子を合成して集積固定化、(2)集積固定化したアクセプター分子に糖鎖修飾、の二方面からアプローチする。さらに、固定化する金基板についても、(1)これまでのフラットサーフェス、(2)マイクロパターン、(3)ナノ粒子・ナノロッドなどを試し、細胞応答挙動の精密制御やバイオセンシング技術への応用展開を図る。あと2年間で新研究領域の基盤構築を目指す。
|
Research Products
(11 results)