2011 Fiscal Year Annual Research Report
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21680057
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
飯島 慈裕 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, 主任研究員 (80392934)
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Keywords | 国際研究者交流 / ロシア / 気候変動 / 永久凍土 / 気象観測 |
Research Abstract |
平成23年度は研究対象地域である東シベリア・ヤクーツク周辺地域での永久凍土の現地観測を継続するとともに、気候・衛星データ解析と合わせて研究を推進し、途中成果の公表を進めた。 現地観測では、地温・土壌水分の分布観測点での継続観測を実施した。レナ川をはさんだ右岸、左岸のタイガ林、アラス草原地域において、本科研で制作した特注の凍土用掘削ボーリング機を用いて観測点の増設を図った(ロシア科学アカデミーシベリア支部・永久凍土研究所の協力を仰いだ)。4、9月に現地を巡検・踏査し、観測サイトにおいて、熱伝導率計による土壌の熱・水分特性の鉛直分布測定を行った。その結果、依然として活動層内部に湿潤な土壌が滞留し、永久凍土表層の融解が見られることが明らかとなった。 気候データ解析では、最近の湿潤化の実態について、降水増加の原因となる低気圧経路の年々変動の解析を進めた。部署内で開発した低気圧経路のデータセットによって、特に夏季後半(7-9月)の降水をもたらす低気圧変動について、東シベリア域では、2005~2007年に特徴的な増加の偏差を示すことが明らかとなった。 衛星データ解析では、ALOS-PALSARデータを用いた、水域・森林地域の分類と、陸上での多湿地域の抽出について解析作業を進めた。本科研によるENVIとArcGISの導入によって、広域画像と狭域画像の2つの空間スケールにおいて、乾湿情報を含んだ新たな土地被覆分類の作成のベースとなる地図化作業を開始した。 以上の現地観測、気候データ解析、衛星データ解析の成果を国内・国際学会で発表した。成果の一部は平成24年度に開催予定の国際永久凍土学会の論文集に投稿・受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地観測地点は当初予定通りに設置され、新規観測データが着実に得られている。この研究の背景となる気象解析についても、所属研究機関内の協力体制によって、北極域の低気圧経路解析という斬新な手法で研究が進展している。これらの成果は速やかに解析され、国際学会での発表、国際誌への投稿も進んでいる。本研究の最終成果の一つである衛星データを用いた広域の永久凍土荒廃地図化についても、GIS解析を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は最終年度であるため、本研究の最終成果として、永久凍土荒廃のメカニズム(地形や植生の変化過程)の解明と、その広域的な地図化を進展させる。そのために、永久凍土の融解過程を含む陸面の熱・水収支のモデル(海洋研究開発機構内で開発されているものを積極利用する)を利用し、特に湿潤化という気候変化がもたらす現象の解明を進める。永久凍土荒廃の地図化については、衛星データ解析による広域変化の抽出をするため、GIS解析業務を委託し、密接な連携によって作業を進めていく。
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Research Products
(7 results)