2009 Fiscal Year Annual Research Report
高分解能行動データに基づく北極圏高次捕食動物の環境応答解明
Project/Area Number |
21681002
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
渡辺 佑基 National Institute of Polar Research, 研究教育系, 助教 (60531043)
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Keywords | 北極 / 捕食者 / ニシオンデンザメ / データロガー |
Research Abstract |
北極圏スバールバル諸島(ノルウェー)周辺の海域においてフィールド調査を実施した。延縄でニシオンデンザメを捕獲し、データロガーおよびカメラロガーを取り付け、放流した。機器は自動切り離し回収システムで回収した。各24時間、計6個体分の行動データが得られた。北極海の最高次捕食者(体長3~3.5m)の自然状態での行動を詳細にモニタリングした、貴重なデータセットになった。深度データを見ると、どの個体も200m以浅の幅広い深度帯を頻繁に上下移動しながら泳ぎ続けていた。これは、パッチ状に分布する餌を見つけるための最適な探査方法の可能性があり、ランダム・ウォークモデルと合わせたデータ解析を進めている。速度、加速度データを見ると、本種の動きはとても緩慢であることがわかった。遊泳速度は0.1~0.2m/s、尾鰭の振りの周波数は0.12~0.15Hzで、これは同サイズの他の魚類や海生哺乳類に比べて極めて遅い。冷たい北極海では、変温動物である魚類の代謝は低く抑えられ、それが行動を強く制限していると解釈される。カメラロガーからは、ニシオンデンザメの捕食シーンが捉えられると期待したが、残念ながらそのような画像は得られなかった。行動調査と並行して、延縄で捕えたニシオンデンザメの解体調査も並行して行った。多くの個体の胃から、オオカミウオやタラなどの魚がほとんどそのままの形で出てきた。ニシオンデンザメは、これらの魚を丸のみしていると示唆される。また、一部の個体の胃からは、ゼニガタアザラシの幼獣が出てきた。緩慢なニシオンデンザメがどのようにアザラシを捉えるのかにも注目し、行動データの解析を進めている。
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Research Products
(5 results)