2011 Fiscal Year Annual Research Report
高分解能行動データに基づく北極圏高次捕食動物の環境応答解明
Project/Area Number |
21681002
|
Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
渡辺 佑基 国立極地研究所, 研究教育系, 助教 (60531043)
|
Keywords | 北極 / 水温 / 遊泳 / 捕食 |
Research Abstract |
ノルウェー極地研究所のJon Aars博士らの協力のもと、スバールバル諸島(ノルウェー)にてホッキョクグマのフィールド調査を実施した。海氷上を歩きまわっているクマをヘリコプターで上空から探し、麻酔銃を使って捕獲した。体長、体重などの形態を計測し、血液を採取したあと、衛星発信機と日本から持ち込んだ加速度記録計を組み込んだ首輪を装着した。クマはやがて自然に目を覚ますので、そのまま寝かせた状態で現場を離れた。このようにして計4頭のクマに加速度記録計を取り付け、帰国した。平成24年4月現在までに、そのうちの2頭がJon Aars博士らの手によって再捕獲され、記録計が回収されて日本に送られてきた。データは2頭分とも良好であり、加速度の記録を解析することにより、歩行、休息などのクマの行動パターンを読み取ることができた。 ニシオンデンザメの論文を完成させてJournal of Experimental Marine Biology and Ecology誌に投稿し、受理された。ニシオンデンザメは、体サイズで補正すると、いままでに測定されたどんな魚類よりも遊泳速度や尾びれを動かす頻度が遅いことがわかった。一般に、動物の運動を支える筋肉の活性は、温度が下がるほどに低下する。この論文により、ニシオンデンザメのような変温動物においては、北極海の低水温の影響が直接行動に表れることを示すことができた。いっぽうで、そのように動きが緩慢なニシオンデンザメが、なぜか北極海でアザラシを捕食しているという謎が残った。これについては、水面で寝ているアザラシを狙うのだろうという仮説を提示するにとどまった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通りホッキョクグマとニシオンデンザメの二種から行動データを取得でき、さらにニシオンデンザメについては、北極海の低水温の影響を論文にまとめることができたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
ホッキョクグマの行動データの解析をすすめて論文にまとめる。いっぽうで、ニシオンデンザメの研究の過程で、ネズミザメという別種の北極海のサメを研究しているグループと知り合うことができた。そのつながりを利用してネズミザメの行動データを取得する予定である。ネズミザメは、ニシオンデンザメや他の多くの魚類と異なり、体温を水温よりも高く保つことが知られている。そのため、低温の影響は恒温動物であるホッキョクグマと同様、間接的であると予想される。このようにして北極海における高次捕食動物の環境応答の研究を着実に進めていく。
|
Research Products
(5 results)