2011 Fiscal Year Annual Research Report
行動の進化を探る:種特異的発声行動の分子基盤の抽出と検証
Project/Area Number |
21681024
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
和多 和宏 北海道大学, 大学院・理学研究院, 准教授 (70451408)
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Keywords | 発声学習 / 種特異的行動 / 進化 / 発声行動 / 遺伝子発現 / 動物行動 / ソングバード / 発声パターン |
Research Abstract |
各々の動物種がもつ種特異的行動が進化の過程でいかなる分子基盤を背景に形成されてきたのだろうか?動物行動は、個体が表出する動的な生体情報として生命現象を理解する上で欠かせない重要な対象である。また行動形成は形態形成と並び、自然界における生物多様性をつくる大きな要因でもある。 本研究では、「行動の進化」を中心課題に据え、種特異的行動発現に関わる分子基盤の抽出と実験によるゲノムレベルと行動レベルの両面からの検証を行うことを目的とした。そのために、鳴禽類ソングバードの囀り行動とその発声パターンを生成する脳内神経回路に焦点を据えた研究を行ってきた。ソングバードの囀り行動は、その学習・生成に特化した神経回路により可能となる。この神経回路はソングバードの全ての種で保存されているが、そこから生成される囀り行動は、種特異的な発声パターン(時系列構造、発声持続時間、音素数など)をもっている。同じようにワイアーリングしているように見える神経回路から種特異的な発声行動として異なるアウトプットされる。ゲノム上の遺伝情報による脳内における遺伝子発現機序が種特異的な神経回路の性質を決めていると考えられてきた。 これまでの3年間で以下の点に関して、新たな知見を得ることができた。 (i)アジア圏に生息するソングバード近縁種間(10種)の分子系統樹及び、その発声パターンの種特異的表現型抽出。 (ii)新規発声パターン解析法の確立。 (iii)ソングバード脳内遺伝子発現の網羅的ハイスループット解析のためのDNAアレイ構築及び、その実験応用。 (iv)脳内神経伝達物質受容体群の種特異的脳内発現パターンの発見。 さらに現在、上記遺伝子群の神経核の発現レベルと発声パターンの時系列構造の複雑さとの相関解析から抽出された候補遺伝子のウイルス発現系による遺伝子発現改変に伴う発声行動への影響を検証している。
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Research Products
(17 results)