2011 Fiscal Year Annual Research Report
実行機能を中間表現型とした心理-脳神経プロファイルに基づくADHDアセスメント
Project/Area Number |
21683007
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
大村 一史 山形大学, 地域教育文化学部, 准教授 (90431634)
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Keywords | ADHD / 実験系心理学 / アセスメント / 脳・神経 |
Research Abstract |
平成23年度当初は、研究環境の整備を図りながら、前年度の研究成果を国際学会で発表した。前年度に開始した二種類の実行機能測定課題を組み合わせたHybrid Flanker-Go/Nogo課題を引き続き実施し、被験者30名分の事象関連電位データを取得した。被験者にとっては、教示が異なるだけで、同様の反応を要求する2組の条件(Flanker課題におけるCong条件とGo/Nogo課題におけるGo条件)を比較したところ、Cong条件と比べて、Go条件において反応時間が有意に延長し、P3の平均振幅が有意に大きいことが認められた。パーソナリティ特性との間には有意な関係は認められなかった。Go/Nogo課題では反応の抑制と促進が排他的に作用するため、Flanker課題に比べて反応時間が遅延したと推測される。同一刺激に対して同反応を誘発しても、教示によってERPが異なることから、事前に与える教示が後に続く脳内の処理プロセスに影響することが示唆される。さらに、この処理プロセスはパーソナリティ特性には影響されにくいと考えられる。さらに発達障害の示す心理的時間感覚に着目し、時間知覚の学習と運用を捉えることを目的とした時間学習課題を伴った時間判別課題を被験者30名に対して実施し、その課題成績および事象関連電位による脳活動の検討を、パーソナリティ特性と遺伝子多型の両面から検討した。従来の加算平均法による解析以外に、近年注目されている周波数解析を導入し、さらに信号源推定を試みた。学習した時間を正しく弁別できた場合には、右下前頭回から側頭葉にかけてガンマ帯域反応(40Hz;80-120ms)の増大が認められた。この領域が心理的時間感覚の学習と運用に関連していることが推測される。ガンマ帯域反応の個人変動に関しては、パーソナリティ特性と遺伝子多型の両面から検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度初頭から中期にかけては、昨年末の東日本大震災やシールドルームの破損などの予期せぬアクシデントに見舞われた。東日本大震災による建物のひび割れ修繕工事と、火災報知器設置業者によるシールドルームのシールド破損の修復作業により、年度中期まで、安定したデータ測定が可能な実験環境を実現することがかなわなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
障害の有無で名義的にラベリングし、統制群(健常者群)と実験群(ADHD群)を比較する従来の実験計画では、大都市を除く地方都市では、実験群の被験者確保が格段に困難になることを実感している。この背景には、地方都市特有の保守的な考え方に由来する障害や科学研究に対する理解度の低さなどがあるものと推察される。今後は障害の有無で実験計画を組むではなく、近年の障害観に基づき、認知行動特性の連続的な偏差の延長として捉え、名義的な群分けに依らない個人差研究の手法を援用する柔軟な実験計画を推進していく。また研究を広く地域社会に理解して頂くために、研究の紹介や成果を発信するアウトリーチ活動に積極的に努めていく。
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Research Products
(3 results)