2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21683008
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
小村 豊 独立行政法人産業技術総合研究所, ヒューマンライフテクノロジー研究部門, 主任研究員 (80357029)
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Keywords | 視知覚 / 視床枕 / 信号検出理論 |
Research Abstract |
視知覚の統合機序を明らかにするために、色と動きという異なる視覚特徴の統合を要求する課題を、2頭の動物(サル)に遂行させた。色(赤・緑)と動き(上・下)の組み合わせ率のみを変化させると、物理的salienceは一定にしたまま、視覚刺激の曖昧さだけを操作でき、その曖昧さに伴って、動物の知覚判断が、実際に揺れることが、行動学的に分かった。その判断のゆれが、トライアルベースに、サルの主観的な迷いを反映しているのかを精査するために、新たにwagering課題を導入した。具体的には、正しければ、大きな報酬量、間違っていれば、報酬無というリスキーな選択肢と、別のバーを触れば、いつでも少量の報酬がもらえるという安全な選択肢を用意した。すると、まず、刺激の曖昧さが増せば増すほど、動物は、安全なバーを触る頻度が増えた。これらの結果は、信号検出理論上、二つの異なるカテゴリー弁別において、視覚刺激の曖昧さは、内的な信号値を、リスキー・安全の境界は、選択基準を反映しているとみなせることが分かった。 過去の研究によって、色と動きは、大脳皮質の異なる領域、V4とMTで分散処理されることが分かっている。これらの領域と、双方向性の解剖学的結合を有する視床枕領域の神経活動を、ムシモールによって、薬理学的に不活性化させて、動物のwagering課題の行動データをとった。すると、物理的に同一の視覚刺激に対しても、視床枕にムシモールを注入すると、動物は、安全なバーを触る頻度が増えた。このことは、視床枕の不活性化が、信号検出理論上、選択基準を安全よりに緩めているか、内的な信号値を減弱させているかを示唆する。
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