2009 Fiscal Year Annual Research Report
厳密なカイラル対称性をもつ格子QCDによる標準理論の精密検証
Project/Area Number |
21684013
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
金児 隆志 High Energy Accelerator Research Organization, 素粒子原子核研究所, 助教 (20342602)
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Keywords | 量子色力学 / 格子上の場の理論 / 計算科学 / ハドロン物理 |
Research Abstract |
本研究の目的は、標準理論の精密検証に向けて、ハドロンの非摂動的性質を格子QCDの数値シミュレーションによって明らかにすることである。初年度である平成21年度は、任意の物理量の計算において基礎データとなる格子QCDの場の配位の生成を行った。クェンチ近似による制御不能な系統誤差を避けるため、軽いアップ、ダウン、ストレンジクォークを動的に取り扱った。また、従来のクォーク作用は、カイラル対称性を陽に破り、従って、バッグパラメータなどの重要な物理量の高精度計算を困難にする。そこで、オーバーラップ型作用を用いてカイラル対称性を厳密に保って配位生成を行った。このような理想的な配位の生成には膨大な演算量が必要であるが、物理的、及び、応用数学的視点から計算手法を改良し(大局的トポロジーの固定、及び、アルゴリズムの改良)、また、高エネルギー加速器研究機構設置のスーパーコンピュータを効率的に使用することによって、初年度で配位生成を完了することができた。 その後、本研究の特色の1つである、任意の格子点から任意の点へのクォークプロパゲータの計算に着手した。このようなプロパゲータは、従来の固定点からのプロパゲータと異なり、任意の物理量の計算に再利用できるため、ハドロンの様々な性質を研究するのに非常に効率的である。 さらに、物理量の計算も開始した。パイ中間子の荷電半径に関しては、通常は無視される2ループの効果まで考慮すれば、カイラル摂動論の予言式と一致することを示した。また、計算の途中で、本論文にまとめるまでには至っていないが、中性ベクトル中間子の混合がほぼ理想的であることを数値的に検証した。さらに、ダークマター直接探索実験の解析において重要な核子のストレンジクォーク含有量の計算にも着手した。
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Research Products
(17 results)