2011 Fiscal Year Annual Research Report
厳密なカイラル対称性をもつ格子QCDによる標準理論の精密検証
Project/Area Number |
21684013
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
金児 隆志 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助教 (20342602)
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Keywords | 量子色力学 / 格子上の場の理論 / 計算科学 / フレーバー物理 / ハドロン物理 |
Research Abstract |
本研究の目的は、標準理論の精密検証に向けて、ハドロンの非摂動的性質を格子QCDの数値シミュレーションによって明らかにすることである。平成23年度は、まず第一に、核子のストレンジクォーク成分を格子QCDによって非摂動的に計算した。この量は、ダークマター直接探索実験の感度(ダークマターの散乱断面積)を決める重要な物理量であるが、従来の現象論値は非摂動効果による大きな不定性を持っていた。本研究では、系統誤差を大きく削減するため、カイラル対称性を厳密に保つ理想的な格子QCDの定式化を用い、世界に先駆けて大規模シミュレーションを行った。その結果、ストレンジクォーク成分を高精度で計算し、論文にまとめることができた。 また、小林行列要素|Vus|の決定において重要なK中間子セミレプトニック崩壊の形状因子を計算した。分岐比の実験精度に見合う理論計算を行うためには1%以下の精度が必要になるが、これまでの計算では、動的クォークの効果が無視されたり、或いは、カイラル摂動論、実験との整合性が十分に検証されていなかった。カイラル対称性を保つ理想的な格子QCDの定式化を用いることによって、|Vus|の決定には関与しない時間反転奇な形状因子、及び、形状因子の運動量遷移依存性において上述の整合性を確認した。その上で、時間反転偶な形状因子を1%の精度で決定することができた。
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Research Products
(10 results)