2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21685016
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
植村 卓史 京都大学, 工学研究科, 准教授 (50346079)
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Keywords | 多孔性金属錯体 / フッ化ビニリデンオリゴマー / 強誘電性 / 誘電緩和 / セグメント運動 |
Research Abstract |
高密度記憶素子の構築に向け、強誘電性高分子のナノ構造体が形成され、その物性評価が盛んに行われている。しかし、基板上の高分子ナノ構造体やナノ細孔中の高分子を用いたこれまでの研究では、数nm以下の領域での物性は未だ明らかになっていない。一方、2nm以下の均一な細孔を有する多孔性金属錯体が近年注目を集めている。多孔性金属錯体の細孔のサイズや表面環境は様々に変化させることができるため、その細孔中に高分子を導入することで、細孔中における高分子の本数や環境を、自在にかつ厳密にコントロールすることが可能となる。本研究では、強誘電性を示すフッ化ビニリデンオリゴマー(o-VDF)を細孔中に導入することで、細孔中における誘電挙動について検討を行った。o-VDFをアセトンに溶解させ、そこに細孔径が1×1nm^2である多孔性金属錯体[Tb(benzene tribenzoate)]_n(1)を浸漬した後、窒素雰囲気下で140℃に加熱することで、融解したo-VDFを細孔内へと導入した。粉末X線回折、窒素吸着測定などにより、多孔性骨格を保持したまま細孔内にo-VDFを導入できたことを確認した。得られた複合体の誘電分散測定を行ったところ、-120℃および0℃付近に誘電緩和を観測した。バルクのo-VDFや錯体1ではこのような緩和挙動は観測されず、細孔中に閉じ込められたo-VDF由来の誘電緩和であると考えられる。複合体において観測された二つの緩和は、共にアレニウス型の周波数依存性を示し、それぞれo-VDFの局所的な運動(-120℃)、再配向に伴うセグメント運動(0℃)に由来することが示唆された。1の細孔中におけるo-VDFの強誘電性についても検討を行った。
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