2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21685016
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
植村 卓史 京都大学, 工学研究科, 准教授 (50346079)
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Keywords | 多孔性金属錯体 / 発光制御 / ジスチリルベンゼン / コンフォメーション変化 |
Research Abstract |
金属イオンと有機架橋配位子から形成される多孔性金属錯体の特徴の1つに、外部刺激による構造の柔軟な変化が挙げられる。このような柔軟性多孔性金属錯体に発光性分子を導入し、溶媒やガスの吸着によってホスト構造を変化させることができれば、そのホスト変化と同期して発光性分子のコンフォメーションやパッキングが変化し、発光をコントロールできると考えられる。本研究では、発光性高分子であるPoly(p-phenylene vinylene)(PPV)のユニット構造であるdistyrylbenzene(DSB)を導入し、溶媒分子やガス分子の吸着や熱といった外部刺激を与えることで発光をスイッチングすることを試みた。 粉末状のホスト錯体[Zn2(terephthalate)2(triethylenediamine)]n(1)(細孔径=7.5×7.5Å2)とDSBを固相混合後、真空下で加熱してDSBを昇華させてホストへの導入を行った。XRPD測定の結果より、ホスト骨格が元の構造(1)から変形した構造(1')に変化した複合体(1'⊃DSB)であることを確認した。また、その複合体(1'⊃DSB)にアセトニトリルを吸着させると、ホスト骨格が元の構造(1)へと変化した複合体(1⊃[DSB+CH3CN])が得られた。さらに、その複合体(1⊃[DSB+CH3CN])から真空引きによりアセトニトリルを除去するとホスト骨格の構造が保たれた複合体(1⊃DSB)へと変化することがわかった)。蛍光量子収率測定を行った所、1'⊃DSBでは0.02である一方、1⊃[DSB+CH3CN]や1⊃DSBでは0.61、0.54となり、発光強度に大きな差異が見られた。また、1⊃DSBを150℃で加熱すると、1'⊃DSBの状態に戻り、熱や吸着といった外部刺激によってホスト骨格と共に発光挙動を変化させることができた。 そこで、DSBのコンフォメーションを調べるために、IR測定を行った。DSBのC-H面外変角振動に着目すると、1⊃[DSB+CH3CN]や1⊃DSBはバルクと同様のスペクトルを示したが、1'⊃DSBは低波数側にシフトしており、1'の骨格中のDSBはバルクとは異なる状態であると示唆された。理論計算を行った所、DSBの二重結合周りの二面角を大きくするとC-H面外変角振動のピークが低波数側にシフトすることから、1'の骨格中ではDSBはねじれていることが示唆された。DSBのような・共役分子はねじれると無放射失活過程が支配的になるために発光強度が小さくなることが報告されており、これは本系における1'⊃DSBの消光の原因であると考えられる。すなわち、分子のコンフォメーション変化が発光挙動の変化に大きく寄与していることがわかった。
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