Research Abstract |
タイ東北部では,高塩分濃度地下水のために人為的および自然発生的な塩害を生じており,同時にこの地下水くみ上げによる地盤陥没も問題となっている.地盤工学的には,浸透,溶解物質移動,変形を含む,このような複合的地盤汚染問題を取り扱うために,初年度には物質輸送方程式を既存の不飽和土/水連成有限要素解析に組み込んだシミュレータの開発,2年目には空気項を考慮し,空間離散化手法に改良を加えることでより精緻な解を可能にした.本年度は,得られたシミュレータを実問題へ適用し,解析精度を高めることを目的とした. 東日本大震災で津波に襲われた地域は,長期間の冠水や,海底土砂の堆積によって,地盤の塩分濃度が高まっていることが懸念された.まず,震災による塩害の状況を把握するために,現地にて土壌を採取し,塩分濃度を計測した.所々で地表面に塩分が析出している地域もあったが,土壌への塩分の浸透は少なくその影響は大きくとも地表面から10cm程度であることが分かった.同時に降雨,蒸発といった気候条件を考慮した塩害シミュレーションを行った. 津波被害の大きかった陸前高田市では,日本百景にも選定されている「高田松原」で,7万本にも及ぶ松が流され,一本だけが残った.この松を,「希望の松」と称し復興のシンボルとすべく保護活動がなされた.地盤沈降により地下水位上昇,海水相当の濃度を持つ地下水の影響も予想され,止水矢板打設と地下水くみ上げによる対策が行われた.本研究ではこれらの対策効果について,シミュレーションを行った.その結果,地盤の透水係数が相当高いことから,地下水位低下があまり見込めないことが分かった.また,地下水位だけでなく,塩分上昇を抑制するためには甚大なフラッシング水量が必要であることも明らかとなった.
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