2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21687002
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
松浦 健二 Okayama University, 大学院・環境学研究科, 准教授 (40379821)
|
Keywords | シロアリ / 卵保護 / 菌核菌 / 擬態 / 進化 / ターマイトボール / ヤマトシロアリ / タカサゴシロアリ |
Research Abstract |
西表島においてタカサゴシロアリNasutitermes takasagoensisの卵塊中から発見された新たなタイプの卵擬態菌核菌(ターマイトボールーZ)についてITS領域の塩基配列に基づいて系統解析を行った結果、これまで知られていたヤマトシロアリ属Reticulitermesやイエシロアリ属Coptotermesが保有する卵擬態菌核菌とは異なる起源であることが明らかになった。シロアリの卵認識・卵運搬を利用して巣内に運搬され、保護されるという戦略は、温帯域と亜熱帯域において少なくとも独立に2回起源したことが示された。また、それぞれのホスト種のシロアリの卵サイズ選好性と実際の卵サイズ、および菌核サイズを比較解析した結果、菌核菌は投資資源当たり運搬される菌核数が最大となるサイズ、すなわち、適応度が最大化されるサイズで菌核を生産していることが示唆された(Biol J.Lin Soc, in press)。 また、ヤマトシロアリの職蟻が物理的に接触できないように金網で囲んだ卵を知覚できるという実験結果から、卵から揮発性フェロモンが出ており、職蟻はそれをcueとして卵への定位を行っている可能性が示唆されたため、HS-GC/MSを用いて、卵の揮発成分を分析したところ2種類の揮発性成分が検出された。それらの揮発性成分が職蟻による卵運搬行動にどのような効果を持つのかを調べた結果、揮発性成分とともに卵認識フェロモンを塗布した擬似卵は、卵認識フェロモンのみを塗布したものより擬似卵運搬率が有意に高かったが、揮発性成分のみを塗布したものでは何も塗布しなかったものと比べて有意な差が無かった。したがって、シロアリの職蟻は揮発性フェロモンによって卵を定位し、卵表面の化学的情報によって卵を認識していることが明らかになった。シロアリにおいて、女王によって生産される卵は、ワーカーが巣内の複数個所に運搬して、卵塊を形成し世話を行う。ヤマトシロアリは光の届かない閉所に生息するため、視覚情報を用いることができない。そのため卵を認識する際は、表面の化学物質(リゾチームやβ-グルコシダーゼなど)を卵認識フェロモンとして利用している事が知られていたが、シロアリ卵における揮発性フェロモンの存在が最近明らかとなった。
|